膀胱上皮内癌を初発とし,温存療法中に特異な形態を呈して肝転移した1例

(財)北野病院 臨床病理部(1) 大阪歯科大学口腔病理学講座(2)

平野 耕一(CT)(1) 仲村 佳世子(CT)(1) 向野 晶(CT)(1) 平井 達也(MT)(1) 西岡 千恵子(MT)(1) 福井 聡(MT)(1) 香月 奈穂美(MD)(1) 奥野 知子(MD)(1) 和唐 雅博(MD)(2) 鷹巣 晃昌(MD) (1)

【はじめに】表在性膀胱癌の治療法は、膀胱温存療法が一般的であり、TUR-BT単独、あるいはTUR-BT後BCGや抗癌剤の膀胱注入療法が行われている。上皮内癌を初発としBCGによる温存療法をされたが、膀胱内での異所性再発後、特異な形態を呈して肝転移した症例を経験したので報告する。

【症例】60代前半男性。

【主訴】血尿。

【既往歴】50代前半に側頭葉てんかん、高脂血症。

【家族歴】特記すべき事項なし。

【現病歴】3年半前、健診にて血尿を指摘され、当院泌尿器科紹介受診となる。尿細胞診にてclassV、膀胱鏡ならびに生検にて前壁に上皮内癌を確認。TUR-BT後BCG40mg膀胱注入8回実施。尿細胞診にて一時腫瘍は消失したが、しばらくして右後壁に腫瘍再発。TUR-BTにてTCC G2 pTa。以後BCG40mg膀胱注入8回追加。尿細胞診にて陰性化しないために、膀胱鏡にて確認。生検の結果TCC G3、pT2以上を認め、精査加療目的にて入院となる。 

【入院後経過】再発腫瘍は、直径3.5B、非乳頭状広基性の浸潤癌であったため、治療開始2年後よりCOMPA動注4コ−ス、12月にCOMA動注1コ−ス、計5コース実施。尿細胞診にて腫瘍は消失し、治療効果確認目的にTUR-BT。再発が認められず、腹部〜骨盤CT,胸部CT陰性であったために、外来にて経過観察となる。治療開始3年後、腹部CTにて肝臓S5領域に直径5Bの単発性腫瘤を確認。肝硬変や肝炎の所見を欠くため、転移性肝腫瘍と診断されて亜区域切除された。組織学的に浸潤性膀胱腫瘍と同様の形態であった。術後3ヵ月を経て肝門部リンパ節腫大による胆管狭窄、胆汁鬱滞による肝機能不全ならびに多発性肝転移をきたし、全経過3.5年にて永眠された。

【細胞・組織所見】浸潤癌の時期における尿中に出現した細胞像は、小型ながら濃染裸核状の細胞集団で、小細胞癌特有の鋳型配列を呈するものも出現し、非浸潤癌の細胞形態とは明らかに異なっていた。組織所見においても同様で、HE染色標本では神経内分内分泌腫瘍を疑い、免疫組織学に、NSE、シナプトフィジンは陽性であったが、クロモグラニンが陰性で、電顕的にも神経内分泌顆粒が証明できなかった。肝転移巣の組織像、免疫組織学的所見は、膀胱腫瘍と同様であった。

【まとめ】膀胱上皮内癌を初発とし、温存療法中に特異な形態を呈して肝転移した症例を経験した。組織診断について諸先生方に、ご意見を賜れば幸いです。

初回細胞診

初回生検

膀胱再発細胞診

膀胱再発生検

再再発尿細胞像

再再発膀胱腫瘍組織x20

再再発膀胱腫瘍組織x40