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神経病理グループ

神経病理グループでは、臨床へフィードバックされる生検組織(筋・末梢神経・脳)や剖検症例の臨床 病理診断に加え、研究面では致死的な運動ニューロン病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病類縁疾患、疾患モデル動物としてALS1モデ ル、Infantile neuroaxonal dystrophy (INAD) や鉄蓄積を伴う神経変性症 (NBIA2) の疾患モデルなどの病理学的解析を行っています。

大阪大学での生検神経・筋組織の病理診断は1983年から多くの諸先輩方が生検手技や標本作製などの業務を分担・協力して、スタートされました。現 在は大学病院や関連病院から依頼を受けて染色標本を作製し、国立病院機構刀根山病院の藤村先生と共に定期的に読み合わせを行い病理診断しています。神経・ 筋疾患の病態を深く理解し、より良い治療を見出すために病理学的解析は重要であり、医学生さんや若手医師が実習やCPC検討会を通じて病理像を実際に目に することは貴重な経験となるでしょう。また、難治性神経・筋疾患の患者さんの治療につながるよう、患者さんやご遺族の方のご協力のもとに検体を用いた臨床 研究も進行中です。

神経変性疾患の病理学的研究では、実際の神経疾患と疾患モデルを同じ条件で比較検討できることに解析法としての強みがあります。神経病理像を自分の 目で観察し、これまでの知見や疾患モデルから得られたデータから来る想像力を働かせて、患者さんの神経変性の病因病態を、二次元的にリアルタイムで考察す る作業は非常に刺激的です。病理学的研究は保守的なイメージですが、疾患に関連する新しい候補分子に着目すれば新しい観点からの解析が追加され、常に新し いのです。疾患モデル動物を用いた神経病理学的研究の究極の目標は、実際の神経難病の病因病態を明らかとし、その病態に応じた治療法を考案することです。

隅 寿恵

研究紹介

ALS患者さんの約1割に家族歴を有し、家族性ALS患者さんの3割程度にSOD1遺伝子異常(ALS1) を伴います。疾患モデルを用いたALSの研究については、変異superoxide dismutase1 (SOD1, G93A)遺伝子トランスジェニックマウスを形態計測的な定量評価と、細胞内処理機能に関する分子や細胞内小器官マーカー、酸化ストレスマーカー、病因病 態に関連する候補分子などに対する免疫組織学的染色、電子顕微鏡的検索を組み合わせて解析します。従来、運動神経変性の二次産物と考えられていた異常構造 物にも焦点を当ててその病理学的意義を明らかにすることで、病態の理解を新しい角度で深めます。最近では、弧発性ALSの原因分子の候補と考えられている TDP-43の細胞内凝集や局在異常がSOD1遺伝子異常を有するALS1症例と疾患モデルにも存在することを、鳥取大学の加藤先生との共同研究によって 報告しました。それにより、TDP-43凝集や局在異常が二次的に生じうることが示唆され、現在そのきっかけが何かを解析中です。

大阪大学遺伝子学教室の新沢先生、辻本先生との共同研究により、緩徐進行性の運動機能障害を呈するgroupVI phospholipaseA2β (PLA2G6)遺伝子ノックアウトマウスを病理解析し、INADの神経組織で特異的に観察されるtubulovesicular structureが患者さん同様、中枢・末梢神経とも広範にわたって多数認められ、優れた疾患モデルであることが論文になりました。さらに、浜松医科大 学の瀬藤先生との共同研究により、ミトコンドリア内膜とシナプス前膜に含まれるリン脂質の代謝不全と膜変性から神経軸索の変性が生じることを示しました。 PLA2G6は鉄蓄積を伴う神経変性症 (NBIA2) の原因遺伝子でもありますが、PLA2G6遺伝子ノックアウトマウスの黒質網様部などにも鉄の蓄積が認められることがわかり、鉄の蓄積と神経変性との関係 を解析中です。

大阪大学NCPC検討会 について

CPC(患者さんの死後、ご遺族のご協力のもとに剖検を行って病理診断し、臨床経過と合わせて討論するカンファレンス)は神経疾患を深く、正しく理 解するために重要です。近年、剖検数は減っておりますが、この貴重なカンファレンスを関連病院の先生や、大阪大学の他科の先生とも一緒に共有し討論できる 大阪大学NCPC検討会を、定期的に学内で開催しています。

メンバー紹介

  • 隅 寿恵
  • 隅蔵 大幸
  • 曽根 晶子

最近の業績

  • Beck G, Sugiura Y, Shinzawa K, Kato S, Setou M, Tsujimoto Y, Sakoda S, Sumi-Akamaru H Neuroaxonal dystrophy in calcium-independent phospholipase A2β deficiency results from insufficient remodeling and degeneration of mitochondrial and presynaptic membranes. J Neurosci. 2011 31(31):11411-11420.
  • Sugai F, Baba K, Toyooka K, Liang WC, Nishino I, Yamadera M, Sumi H, FujimuH, Nishikawa Y. Adult-onset multiple acyl CoA dehydrogenation deficiency associated with an abnormal isoenzyme pattern of serum lactate dehydrogenase. Neuromuscul Disord. 2012 Feb;22(2):159-61.
  • 抗GAD抗体関連小脳失調症と考えられた 1 例 隅蔵大幸、立花久嗣、奥野龍禎、高橋正紀、望月秀樹 神経内科 2012, 76(3); p293-296
  • 孤発性パーキンソン病の病因仮説 隅蔵大幸, 齊藤祐子 Modern Physician 2012, 32(2); 150-153
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