ご挨拶

西田 幸二 教授からのご挨拶

西田幸二教授 本年度から、故田野保雄前教授のあとを受けて、第九代の教授に就任し、大阪大学眼科学教室を主宰することとなりました。大任を与えて下さった大阪大学の先生方、同窓会の先生方のご期待にこたえるべく、教室の運営に全力を傾ける決意でございます。4月1日に赴任して以来、学内外の多くの先生方とお話させていただき、阪大眼科の将来像とそれを具現化するためのビジョンを考えてまいりました。大学医学部の使命は教育、研究、診療の3つがありますが、なにより、一流の医師、医学人を育てることが大切であり、そのためのシステムを作っていきたいと思います。

 私は真鍋名誉教授が阪大眼科を主宰されていました昭和63年に、阪大眼科に入局いたしました。当時より、教室内には好奇心と新しいアイデアが溢れており、難治な患者さんの治療に当りながら、日々熱い議論を交わされていたスタッフの先生方の背中をみて、眼科学の大切さ、面白さを学びました。以後、眼科学にみせられ、研究や臨床、教育に自分なりに全力をつくしてまいりました。これまで、難治性角膜疾患に対する角膜移植を多数例手がける機会に恵まれましたし、また、再生医学を角膜疾患に応用する幸運にも恵まれました。これも、親身なご指導を賜りましたました学内外の先輩方、私とともに働いてくださった同僚や後輩、緊密な共同研究をしてくださいました先生方のおかげと深く感謝しております。また、4年ほど前に東北大学に赴任しました折にも多くのすばらしい人に出会い、教室をあづかる立場として、様々な新しい経験をさせていただきました。

 さて、研究医制度の改革、医療のIT化など、現代は医療制度が大きな変革の時期であります。そうした中で、臨床医学としての大学病院眼科の不変な役割は、難治性眼疾患に対する最終受け入れ病院として、高度医療を実践することであると思います。阪大眼科は全国に先んじて専門クリニックを創設し、これまで各専門クリニックを隔たりなく充実させ、いかなる眼疾患に対しても総合的に治療できる診療体制を構築してきました。今後さらにこの総合的臨床力を維持発展させたいと考えます。さらに、大学だけでは地域医療を高いレベルに維持はできません。幸いにも、この関西地域には、多くの優れた眼科医が活躍されております。今後関連病院眼科や診療所との連携を強化し、プライマリーケアからターシャリーケアまでの役割分担を明確にして、今まで以上に強固な病診連携体制を作り上げることができればと考えています。何卒よろしくお願い申し上げます。

 近年、眼科学は大きな進歩を遂げています。分子生物学的手法によりさまざまな眼疾患の病態解明が分子レベルで進んでおり、それと並行して、光干渉断層計に代表される各種の革新的な検査機器が診療の現場に応用され、実際の患者さんの観察を通して病態の理解が深まっています。治療についても、レーザーなどの治療用デバイスや抗体医薬などの新規薬剤が開発され、治療の選択肢を広がってまいりました。しかし、緑内障や加齢黄斑変性、網膜色素変性、水疱性角膜症など、十分な根治的治療法がない病気も少なくありません。今後、from bedside to bench and from bench to bedsideの方針で、臨床応用に対する強いモチベーションを持って、再生医療や人工視覚、分子標的薬などの新規の治療法、OCTなどの革新的な診断法の開発を目指すトランスレーショナルリサーチを推進していくことを教室の一つのミッションとしたいと考えております。

 私の好きな言葉に「天時不如地利、地利不如人和」(孟子)があります。この言葉に由来する「天の時、地の利、人の和」という文字が千里ライフサイエンスセンタービルにある故山村雄一先生(第11代大阪大学総長)の記念碑にも彫り込まれていることに最近気がつき感銘しました。「天時不如地利、地利不如人和」の意味は「何事かを達成しようとする時、最も大切なのは、人間そのものの努力で、人の和(団結)である」ということです。今後私自身が常に努力を惜しまず、教室員と一致団結し、学内外の多くの方がたのご指導ご支援を仰ぎながら、若い優秀な医師、医学人が次々と育つ新しい教室づくりに全力を傾けていく所存です。今後とも何卒ご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。 末筆になりましたが、皆様のご健康とますますのご活躍をお祈り申し上げます。


大阪大学 眼科学教室 脳神経感覚器外科学 (眼科学)教授
西田 幸二