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研究テーマ - 異種移植と小腸移植

異種移植(臨床)の歴史

I. 臓器の移植

 異種移植の臨床として古いものだとPrinceteauが1905年にウサギの腎臓を移植している。1906年にもJaboulay がブタとヤギの腎臓をヒトに移植している。また、1963年にReemtsma はチンパンジーとサルの腎臓、Hitchcook はヒヒの腎臓、1964年にはStarzl はヒヒの腎臓を、またHardyはチンパンジーの心臓をヒトに移植している。これらの成績は概ね不本意なものであったが、例外的にReemtsmaの行ったチンパンジーの腎臓は9ヵ月の生着し患者は一時社会復帰をしている。その後1977年にBarnardによって行われたヒヒやチンパンジーからの心移植の場合も4日程度の生着を見たに留まっている。それ以降、異種移植の臨床はあまり行われていない。この間に、ヒト-ヒト間の移植はサイクロスポリンの開発を契機として、1980年代に目覚ましい臨床成績の向上がもたらされ移植数は増え続けた。これにより一時は異種移植への期待は跡絶えたかのようにみえたが、90年頃より移植数が頭打ちとなり、現在では深刻なドナー不足が問題になっている。近年行われた異種移植は1985年にBailey がヒヒの心臓を、1993年にStarzlがヒヒの肝臓を移植し、それぞれ3週間、2ヶ月の生着を得ている。これらはいわゆるconcordantな異種移植である。一方、1992年Czaplickiがブタの心臓を、1993年Makowkaがブタの肝臓を移植しているが、結果としては超急性に拒絶されている。これは、discordantと呼ばれる異種移植である。おそらくこれ以降は異種の臓器の移植は行われていない。

II. 細胞移植

 一方、膵島細胞移植に関してはかなりの数の移植が糖尿病(Diabetes mellitus:DM)の患者に行われた。1981年から85年までの間、ロシアのShumakovらはブタ胎児膵島細胞移植を53例、ウシ胎児膵島細胞移植を18例行なっている。しかし記録としてはあまり残していない。またこの後もロシアでは続けられているらしいがはっきりしたことは不明である。1990年から92年に、スウェーデンのGrothらはブタ胎児膵島細胞移植を10例施行している。対症は、30-47歳、DM病歴平均30年、投与方法は腎皮膜下への移植と一般的なAlloの膵島細胞移植と同じく、経皮的な門脈内投与である。CyA、predonine、Azaに加えて、ATGや15-deoxyspergualinを投与している。成績はinsulinとpig C-peptideをfollowし、平均3ヶ月、最長1年半生着した。後に述べるブタレトロウイルス感染はみられていない。2000-2002(?)年に、メキシコでもValdes-Gonzalezらにより、普通(野生型)の新生児ブタから12例の膵島細胞移植が行われている。対症は11-17歳、DM病歴は平均6.7年である。方法は免疫抑制剤を使わず、Sertoli cellと一緒に、彼らが開発したautologous collagen-covered deviceに入れて皮下に移植している。移植後2度目の再移植を6ヶ月後に行い、3年後にも4症例に再々移植を行っている。成績は6例に効果有りで、うち5例はインシュリンから一時的に離脱している。この後もメキシコではこの治療が行われている。中国では、まず1989年に同済医大の夏穂生らがブタの膵島細胞を筋肉内に3例移植している。続いて、1998年、張(Shenglan Zhang)らが新生児ブタの膵島細胞を同じく患者の筋肉内に8例移植している。さらに中南大学で、王維らは新生児ブタの膵島細胞移植を1999年より2005年に渡って計22例に施行している。患者は18-52歳、DM歴9±4年、ドナーのブタは中南大学の動物舎からのもので、生後3-5日の仔ブタの膵島細胞を肝動脈内への注入している。4種類のプロトコールを現在までに使い分けており、2005年からのプロトコールは、Methylprednisolone, OKT-3, Tacrolimus, Sirolimusを使っている。しかし、北京オリンピック以来この臨床はストップしている。
 一方、6年前よりニュージーランドでは、国会の許可を得てLiving Cell Technologies社が臨床を開始している。これはオークランド島に生息する野生のブタのisletsをカプセル化したもので、相手先はニュージーランド、ロシア、アルゼンチンである。既に30例以上実施している。一定の成績が得られているのと、後に述べるPERV感染は報告されていない。また、新たな動きとして2011年大塚製薬工場(株)がこの会社と合弁会社(Diatranz Otsuka 社)を設立した。

III.その他

 一方、重症肝不全患者に対して、ブタの肝細胞を使ったハイブリッド人工肝臓による、急性肝不全の患者に対する治療がある。既に米国ではFDAの許可のもとに、数百人のオーダーでパイロットスタディー(第・相試験)が行われた。これらも遺伝子改変ブタの使用が望まれ、DAF-ブタを使った治療が始められている。また、Deconはパーキンソン病の治療に胎児ブタの脳細胞を移植している。これも一応の成功を治めている。

Ⅳ.現在の臨床=現況

WHOによれば、世界的には既に32の臨床報告がある(WHO Inventory参照)。これ以外の報告も加えると、現在迄数百例のブタ膵島移植の臨床、また300-400例以上のバイオ人工肝臓の臨床が現実に行われ、一定の成績を治めているようである。

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