2005年、就任4年目にあたり、御挨拶をさせていただきます。
 日本は超高齢化社会となりましたが、このような社会においては、健康で幸せな子供を育てることが、以前よりもさらに重要な課題です。これは、単に成人を増やすためだけでなく、限りない可能性を持つ子供が、周囲に生命力を与えるからです。子供は、成長しかつ成熟していくという躍動的な存在であり、昨日できなかったことが今日できるようになることが、子供の特性の一つであります。小児科医は、毎日、子供と接しているわけですから、常に現況を踏まえつつ、明るい未来を志向しなければならないと考えています。「小児医療は未来医療」と言われる所以です。
 すなわち、小児科医は、現在の子供が大人になる10年後、20年後を考えなければいけませんから、長期展望を持つ必要があります。科学の進歩は、医学の発展をもたらし、病気の原因の解明や治療法の開発と言う点では大きく前進しております。一方で、地球環境は悪化し、新興・再興感染症およびアレルギー疾患が増加しています。また、社会の複雑化に伴い、生活習慣病、虐待、不登校、ひきこもりなどにも、小児科医が対処する必要性が生まれてきました。社会の構成員として小児は明らかに弱者であり、小児科医は小児にとっての幸せな環境を守らなくてはいけません。
 現在、小児医療は、在胎22週の新生児から小児期に発症した慢性疾患を持つ成人までと対象年齢を広げ、また、対象疾患としても、感染症、代謝異常症、内分泌疾患、発育障害、発達障害、悪性疾患等の従来からの疾病に加え、救急疾患に対応することも求められております。小児科医の減少、および、医療経済上の厳しさから公的負担の制限も行われ、最善の医療を思いのままに行なうことが困難となっております。しかし、私は、このような価値観の変遷に振り回されず、優しさと強さをもって小児医療にあたるべきであると感じています。また、病気のみをみるのではなく、その病気を患った子供全体を見ることを常に心がけています。特に、本教室は、診療、教育、研究において日本をリードしていく使命があり、小児医療の発展をめざしております。私達とともに歩んでくださる新しい参画者を求めてやみません。

大阪大学小児科学教室の活動

一般的に大学医学部臨床教室の活動は、教育、臨床、研究を柱としています。それぞれについて簡単に説明します。教育に関しては卒前、卒後に分けられますが、当教室は卒前教育にはクリニカルクラークシップを導入し、病児を病気のみを診るのでなく、ひとりの成長していく子どもとしてみていくための知識と技術が身に付くよう関連病院と連携しながら教育にあたっています。卒後研修では、初期研修の必須科としての役割を意識し、小児のprimary careに必要な経験を積んでいただきます。医学部附属病院のみの研修では不十分と考え、病院外で初期小児科救急も研修できるようにプログラムを組んでおります。また、大阪府立母子保健総合医療センターに研修協力をお願いしております。小児科専門医の教育にあたっては、関連病院2年と医学部附属病院1年からなる専門医研修(後期研修)制度を設け、小児科専門医資格が取得できるように、症例の豊富さと指導医の充実には万全を期しております。さらに、大阪大学は大学院大学でありますので、大学院生の教育にも熱心です。臨床面では、8つの小児医療専門グループがあり、それぞれドップクラスの臨床を行なっていますが、詳細は各グループの紹介ページを見てください。研究面では、大学院生とその指導医を中心として各グループ構成員が臓器特異的な視点と基礎研究共通的な基盤をもって「世界をリードし、次世代をつくる」研究を行っております。成果は一流雑誌に掲載され、また、文部科学省科学研究費、厚生労働科学研究費等の外部資金を十分獲得しております。このように実績をあげ、さらに時代のニーズにあわせた迅速な対応を行なっておりますので、大阪大学大学院医学系研究科小児科学教室の一員となっていただくようお願いいたします。

小児科専門医取得は、ぜひ、阪大病院とその関連病院で

研修医の皆さまへ
 臨床研修必須化が始まり、医師としての研修に励んでいることと思います。充実した日々を送っている方もいれば、理想と現実のギャップに悩んでいる方もいるでしょう。でも、卒後3年目以降の専門医研修(後期研修)こそがこれからの医師としての将来を決めます。ここは、もう一度じっくりと考えてみましょう。専門医研修とは何か?これは従来のストレート型の研修では卒後すぐからの各科での研修にあたるものです。すなわち、小児科医になるために小児科で研修することです。ですから、小児科医としての実力は小児科専門医となるためのこれからの3年間の研修が決めます。まだ、何科に行くか決めていない方もいるかと思います。小児科は時代のニーズが高く、やりがいのある仕事です。ぜひ、阪大病院とその関連病院において小児科医になることをお勧めします。