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教授挨拶

2018年初頭にあたって

 皆さま、新年、明けましておめでとうございます。 

 平素より、大阪大学大学院医学系研究科小児科学講座ならびに阪大小児科同窓会に対しまして、御支援をいただき感謝いたしております。昨年も、様々な出来事があり、慌ただしい日々でしたが、できるだけ長期展望を持って、行動していきたいと思っています。
 昨年は、基本領域全般における新専門医制度による募集が行われ、今年からプログラム制の専門医研修が始まります。日本小児科学会は先行して昨年から同制度を始めておりますが、今回、正式に専門医機構による研修制度の開始となります。研修内容に関し、内科や外科などの他領域との比較が容易に行なえますので、初期研修医の動向がどうなるか注目されましたが、小児科の研修プログラムに入ったのは550名で、例年と変わらない数だったようです。ただ、東京は全体定員を超えましたので、他領域もそうなのですが、東京集中の傾向はありそうです。

 2004年に初期研修が必須化され、大学で研修する医師が激減した際に、入局という言葉を研修と切り離しました。2011年、やはり医師を育てていく力は医局にあるという思いから、新年会の挨拶で、「医局復活宣言」を行いました。今年は、さらに積極的に阪大小児科のブランド力をアピールしたいと考えております。阪大小児科は、時代の変化に柔軟に対応しつつ、長年にわたり優秀な人材を輩出し、日本の小児医療・医学をリードしてきました。本同窓会の結束を図るために、また、それがより目に見える形で、外部にも理解してもらうための試みを始めたいと思います。先程の幹事会で、阪大小児科同窓会の愛称を「未来」とすることを提案し、認めていただきました。2015年に日本小児科学会学術集会を担当しました時にも述べていますが、小児医療は真の意味の未来医療であるという、私達の思いを込めた名称です。阪大医学部附属病院の小児医療センターのマスコットもみらいちゃんと言います。総会に出席の皆様の、ご承認も得たいと思います 。

 日本において、出生数の低下から小児科医の必要性が減るのではないかという議論があります。ワクチンなどの医療の充実により、小児の入院患者の減少ということがあちらこちらで述べられるようになり、その危機感は増えているのかもしれません。でも、決してそうではないと信じております。その理由はたくさんあります。近年、生活習慣病の増加やその予防という観点から、先制医療という言葉が使われるようになりました。肥満症のみならず、多くの成人の疾患が、胎児期を含む小児期に起源を持ち、小児科医は長期的視点を持って、子どもたちの一生の健康を守っていかなくてはなりません。病気の予防というのも、一般論ではなく、ゲノム研究の進歩により個人を対象に論じられる時代になりました。

 ゲノム解析は、研究レベルから診療レベルへと移行しつつあります。がんゲノム医療という言葉をお聞きになったことがあるかと思います。これはがん関連遺伝子の変化を見ることにより、正確に診断を行い、病態を把握し、分子標的療法を行うものです。

 ゲノムの解析を行うテクノロジーの進歩は著しいものがあります。いわゆる次世代シークエンサーの登場により、全エクソンシークエンス(WES)が、数日でできるようになっていますが、この進歩は今後さらに進んで、第4世代シーケンサーともなると、1時間以下の分単位で読めるようになっていくと言われています。WESに1人あたり約30分かかるとすると一日50人分が処理できることになります。2017年の出生数は94万1千人の見込みであり、1日あたりでは2578人です。従って、54台のシークエンサーがあれば、出生した新生児全員に対して24時間以内での解析が可能となります。勿論、塩基配列が分かった後の解析が重要ですが、この部分も、バイオインフォマティクスの発達により短縮することが期待されます。すなわち、今の新生児マススクリーニング検査と同等の速度感となります。費用の面でも、1人に複数の遺伝子をサンガー法で読むより安くなります。その上で、この情報が先制医療につながり、病気の発症を抑えられるのなら、費用対効果は莫大なものになります。決して、遠い将来の話ではありません。米国では、2020年代に多くの国民のWESを行うことを目標にしていると聞いたことがあります。このような時代が来れば、小児科医の役割は無限に広がることになります。

 私達が今、力を入れないといけないのは、このような時代を迎えるにあたって必要な人材の育成です。優秀な小児科専門医を育てることが第一で、研修の質を上げ、セミナーなどを行うことにより学ぶ機会を増やしております。さらに、新しい分野の専門家の育成も重要です。ゲノム科学、統計学、医薬品や医療機器の開発・実用化に関わるregulatory scienceなどの分野について、大学院生に学んでもらっています。このような取り組みにより、小児科学、小児医療にテクノロジーの進歩や画期的新薬を届ける教室を構築できるものと信じております。

 診療面での実績も重要です。昨年より、HP上で診療実績を公表しております。お陰様で、小児医療センターの運営は順調です。稼働率は伸び、平均在院日数は維持されております。先進医療や治験を始めとして、専門性の高い診療を行っており、分野的にも地理的にもカバーする範囲が広いためと思います。NICUも順調に稼働し、当院の特徴である合併症を持つ新生児に対応しつつ、ダウン症を中心とする研究も行っております。同窓会の皆様のご紹介等のご支援に感謝いたします。

 教育については、同窓会会員および関連病院にもご協力いただき、卒前卒後教育を充実させることができています。平成31年度より、初期研修の見直しがなされますが、小児科は必須科として復活する見込みです。初期研修を卒前研修とシームレスに行うという点で、ますます、大学と関連病院の連携が重要になると思いますので、よろしくお願いいたします。

 研究成果も順調に上がっており、基礎教室との共同研究も実を結びつつあります。また、医師主導治験を始めとする臨床研究も論文として、発表する段階になっています。留学生を含めて、来年度はまた、7人の大学院生が加わり、小児科学研究を推進してくれます。

 昨年、お話したように、大阪大学医学部附属病院の建て替えの検討が行われています。国立大学法人への予算カットの影響を受けて、なかなか計画は認めてもらえておりません。その中でも、周産期センターの改築は優先事項となって進みそうです。小児科としては積極的に取り組んでいきたいと思っています。建て替えが完了する25年後の日本の医療は予測できませんが、人口統計に頼っているだけでは展望は開けません。革新的な医療をリードする小児科学教室と同窓会の確立を目指したいと思います。今後もご支援のほどをお願いいたします。  (平成30年1月7日)

 


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