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Successful induction of sclerostin in human-derived fibroblasts by 4 transcription factors and its regulation by parathyroid hormone, hypoxia, and prostaglandin E2

藤原 誠
大阪大学大学院歯学研究科 小児口腔科 助教
Bone, 85:91-98, 2016

〔目的〕 

 スクレロスチンはSOSTがコードする分泌性蛋白質であり、骨細胞において特異的に発現し、WNTシグナル阻害による骨形成抑制作用を有する。SOSTおよびスクレロスチンの発現調節機構には未解明な点が多いが、その解析のために骨細胞を用いるには採取・培養における困難が多い。そこで我々は、採取容易なヒト皮膚線維芽細胞におけるSOSTおよびスクレロスチン発現の誘導を目指した。

〔方法ならびに結果〕

 ヒト骨肉腫由来株の骨芽細胞株SaOS-2を分化または維持培養し、それぞれの発現遺伝子をマイクロアレイにより比較解析することで、SOST発現に関わる可能性のある転写因子を選択した。これらの因子を、レトロウイルスベクターを用いてヒト線維芽細胞において強制発現させ、SOST発現を最も効果的に誘導し得る転写因子群を検索した。結果、ATF3, KLF4, PAX4, SP7の4因子の導入において、ヒト線維芽細胞における誘導SOST発現は対照と比べ1週で199倍、4週で1439倍の著明な増加を認めた。4因子はそれぞれ免疫組織染色により骨細胞に生理的に発現していることを確認したが、それぞれ単独では線維芽細胞においてSOST発現を有意に誘導し得なかった。4因子導入後4週での線維芽細胞の培養上清におけるスクレロスチンをELISA法にて測定し得(平均21.2 pmol/l)、この培養上清がWNTシグナルを抑制することをレポーターアッセイにより確認した。 次に既知のSOST調節因子であるPTH、低酸素培養、PGE2について、誘導SOSTおよびスクレロスチンに対する発現制御を検討した。PTHはSOST発現抑制作用が知られるが、線維芽細胞での誘導SOST発現は、4週間のPTH 100nM添加により非添加の62.3 %に有意に抑制され、誘導スクレロスチン濃度も有意に減少した(非添加31.2 pmol/L、添加5.7 pmol/L)。また低酸素条件は生理的にはSOST発現を増加させる報告があるが、4因子による線維芽細胞での誘導SOST発現は、正常酸素培養下と比し低酸素培養下では162 %の有意な増加を認めた。PGE2は骨細胞においてPGE2受容体のEP2またはEP4を介してSOST発現を抑制するが、PGE2の添加により、4因子による誘導SOSTでは非添加と比し16倍の有意な発現増加を認めた。4因子を導入した線維芽細胞では、EP1の発現のみが著明に誘導されており、EP1アンタゴニストONO-8130によりPGE2の線維芽細胞における誘導SOST発現増強強化が相殺されることから、4因子導入後の線維芽細胞ではEP1を介したPGE2による誘導SOST発現調節機構が存在する可能性が示唆された。

〔総括〕

 我々は4つの転写因子ATF3, KLF4, PAX4, SP7の導入によりヒト皮膚線維芽細胞におけるSOST及びスクレロスチン発現誘導法を確立した。誘導SOST及びスクレロスチン発現は、既知のSOST調節因子であるPTHや低酸素により、骨細胞における内因的なSOST発現と同様の制御を受けた。またEP1を介したPGE2による未知のSOST発現節機構が存在する可能性も示された。今後この手法が正常または疾患特異的なSOST制御機構の解明、さらにはスクレロスチン阻害を戦略とした骨脆弱性疾患に対する創薬につながることが期待できる。

◎本人コメント◎

 学位研究は、大薗教授から「骨細胞を作る」というテーマを与えられて始まりました。結果的に少しテーマからずれましたが、骨細胞に特異的な蛋白であるスクレロスチンの発現をヒト皮膚線維芽細胞に誘導し得て、成果としてまとめることが出来ました。約6年間の研究生活の間も、我儘を言って腎臓外来や関連病院の専門外来などの臨床も続けさせて頂き、大薗教授および腎研の先生方には大変ご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。研究・臨床の両面で大変充実した大学院生活を過ごせたことを深謝いたします。また小児科内のグループを超えて、多くの先生から研究の御助言・ご協力を頂きましたことも、この場を借りて御礼申し上げます。