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Mutation in VPS33A affects metabolism of glycosaminoglycans: a new type of mucopolysaccharidosis with severe systemic symptoms

近藤 秀仁
医学系研究科 情報統合医学 小児科学専攻
Hum Mol Genet , 26(1): 173-183,2017

〔目的〕 

 ムコ多糖症(MPS)は、グリコサミノグリカン(GAG)を分解するリソソーム酵素の遺伝的欠損による疾患である。我々は、粗な顔貌、肝脾腫、骨格異常、呼吸障害、精神遅滞、および尿中GAGの過剰分泌といったMPSに特徴的な症状・検査所見を示す13人のヤクート人患者を同定したが、リソソーム酵素の欠損は認めなかった。これらの患者は、心不全、腎障害、造血障害といったMPSに典型的ではない症状も併発し、心肺機能不全により1-2歳で死亡した。これまで報告されているMPSと異なる特徴を呈しており、疾患の原因と機序について解析した。

〔方法ならびに結果〕

 疾患の原因遺伝子を特定するため、エクソーム解析を施行し、13人の患者全員にVPS33A遺伝子c.1492C> T(p.Arg498Trp)のホモ変異を同定し、患者の健常な両親には全てヘテロ変異を同定した。VPS33A遺伝子はこれまで、ヒトの疾患原因遺伝子としては報告されていない。VPS33A遺伝子c.1492C> T(p.Arg498Trp)変異が常染色体劣性遺伝形式で、この疾患の原因となっていると考えられた。VPS33Aタンパクは、エンドサイトーシスおよびオートファジー経路に関与すると報告されているが、患者細胞では、これらの経路は障害されていなかった。VPS33Aはdomain 1, 2, 3a, 3bの4つのdomainから構成されており、domain 3aおよび3bがエンドサイトーシスおよびオートファジー経路に重要な機能を持つと報告されている。今回同定した変異(p.Arg498Trp)はdomain 2に属しており、domain 2の機能がdomain 3a, 3b とは異なることを示唆した。我々は、患者細胞とRNAiを用いたVPS33Aノックダウン細胞の解析において、GAGの蓄積とリソソーム内pHの低下を同定した。リソソーム内pH低下は、リソソームの機能不全を引き起こし、GAGなどの基質蓄積の原因になると報告されており、我々の症例でもGAGの蓄積とリソソーム内pHの低下が関連している可能性が考えられた。

〔総括〕

 VPS33A遺伝子における特定の変異によって引き起こされる、MPSに類似した新たな疾患を報告する。我々の結果は、GAGの代謝制御とリソソーム内pHの低下という、VPS33A遺伝子の新たな機能を示唆している。この疾患はリソソーム酵素欠損を原因としない新しいタイプのMPSと考えられる。

 

◎本人コメント◎

  阪大小児科・代謝研究室では長年、ライソゾーム病の診断・治療・研究を行っています。特にI cell病に関してはこれまで多くの研究成果を発信しており、ちょうど私の大学院入学時に、ロシア連邦サハ共和国で多発しているI cell病類似疾患に関して症例相談がありました。大薗教授・酒井教授から「疾患の原因究明」というテーマを与えられ、サハ共和国の研究室との共同研究が始まりました。エクソーム解析により原因遺伝子VPS33Aは比較的速やかに同定できましたが、遺伝子の機能解析では従来の報告と異なる結果しか得られず苦労しました。しかし、そのおかげでVPS33A遺伝子の新たな機能を示唆する結果を得て、何とか成果としてまとめることが出来ました。今後は疾病発症のメカニズム解明や、臨床像の詳細な解析などを目指したいと考えています。大薗教授をはじめ、小児科内のみならず、様々な研究室の方々にご指導、ご協力をいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
(大阪大学大学院 医学系研究科 小児科学・近藤秀仁)