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Constitutively active form of natriuretic peptide receptor 2 ameliorates experimental pulmonary arterial hypertension.

那波 伸敏
医学系研究科 情報統合医学 小児科学専攻
Mol Ther Methods Clin Dev, 3: 16044, 2016

〔目的〕 

 CNPは、骨や心臓、血管内皮細胞等で発現するナトリウム利尿ペプチドである。その受容体であるNatriuretic Peptide Receptor 2 (NPR2)は一回膜貫通型で、細胞内でGuanylyl cyclaseと共役し、GTPをcGMPに転換することで様々な細胞内シグナル伝達に関与している。血管平滑筋細胞においては、cGMP経路は重要な血管拡張シグナルであり、細胞内cGMPの増加は、様々な経路で細胞内カルシウム濃度を低下させ、平滑筋細胞の弛緩を誘導する。現在、NO/cGMP経路は肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療ターゲットの一つとしてNO、PDE5阻害薬等が臨床応用されているが、このCNP/cGMP経路を介した治療薬はない。以前に我々は高身長と骨変形を呈する一家系において、NPR2の機能獲得型変体体を発見し報告した。本研究ではこのNPR2の機能獲得型変異体をPAHの治療に応用することを目的とする。

〔方法ならびに結果〕

 高い遺伝子導入効率と安全性からヒトへの遺伝子導入のツールとして期待されているセンダイウイルスベクターを用いてセルラインであるヒト肺動脈平滑筋細胞(PASMC)と肺高血圧症患者由来の肺動脈平滑筋細胞へコントロール蛍光蛋白、野生型NPR2(WT)、機能獲得型変異NPR2(caNPR2)を導入し、細胞内cGMPレベルへの影響、増殖とApoptosisへの影響を検討した。次に、PAH動物モデルとしてVEGF阻害薬を用いてSugen PAH rat modelを作成した。センダイウイルスベクターを用い、コントロール蛍光蛋白、野生型NPR2(WT)、caNPR2を血管内投与により肺へ遺伝子導入し、治療効果を組織学的、血行動態的に検討した。caNPR2を導入したヒト肺動脈平滑筋細胞においては、細胞内cGMPは著増し(control, 0.19±0.12 pmol/ml; WT, 38.3±29.6 pmol/ml; caNPR2, 2,460±577 pmol/ml; n=3; P<0.01)、EdU陽性細胞の比率で検討した細胞増殖能の低下を認めた。一方、Apoptosisの増加は認めなかった。また同様に、肺高血圧症患者由来の肺動脈平滑筋細胞でもcaNPR2を導入した細胞で細胞内cGMPは著増し(control, 3.21±0.378 pmol/ml; WT, 6.80±0.438 pmol/ml; caNPR2, 621±28.1 pmol/ml; n=3; P<0.01)、EdU陽性細胞の比率で検討した細胞増殖能の低下を認めた。一方、Apoptosisの増加は認めなった。Sugen PAH ratにおける検討では、コントロール蛍光蛋白、野生型(WT)投与群と比較して、caNPR2投与群では、右室圧の低下 (cotronl, 61.8±7.4 mmHg; WT, 62.4±6.1mmHg; caNPR2, 46.4±4.7mmHg; n=8; P<0.01)、右室圧、左室圧比の低下を認めた。また、組織学的検討では肺小動脈中膜肥厚の改善、肺細小動脈の閉塞減少を認め、肺高血圧血管病変の抑制をin vivoで確認した。 組織学的改善のメカニズムを検討するため、細胞増殖をPCNA陽性細胞率で、Apoptosisをcleaved caspase-3陽性細胞率で検討した。コントロール蛍光蛋白、野生型(WT)、caNPR2投与群の間で、Apoptosisに差は認めなかったが、caNPR2投与群では肺小動脈平滑筋細胞でのPCNA陽性率は減少し、増殖抑制が関与していたことが示唆された。

〔総括〕

 恒常活性型NPR2の遺伝子治療は、肺高血圧モデルラットで治療効果を認め、in vitroでの効果も確認できた。今後臨床応用に向けさらに検討する予定である。

◎本人コメント◎

 博士課程では以下の3つのプロジェクトに携わる機会を頂きました。①学位論文の研究となった、肺高血圧症モデル動物の遺伝子治療としてナトリウム利尿ペプチドB型受容体の機能獲得型変異体を応用する研究、②染色体異常患者における細胞ストレスをiPS細胞を用いて解析する研究、③ソーシャルネットワークサービスのbig dataを用いて予防接種に関する人々の疑問を解析する研究です。そして、これらの研究を国内外の学会や学術誌に発表し、いくつかの賞を頂くことができました。このように非常に充実した大学院生活を過ごすことができたのも、大薗教授をはじめ小児科内外の様々な先生方に御指導頂いたことによるものと思っております。心より感謝申し上げます。