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教授挨拶

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臨床神経グループ 研究紹介

 小児神経診療で扱う疾患は、きわめて多彩です。まず、神経疾患そのものが多彩です。その理由として、解剖学的構造として中枢神経系・末梢神経・筋は、各構造それぞれが多彩な細胞・構成成分から成り立ち、各部位ごとに異なる機能を有して、代替が効かない特殊性を有していることがあり、病態としても、発生異常による形態異常や細胞の配列異常、細胞分子生物学的な異常としての代謝異常・細胞間情報伝達の異常、酸素・エネルギー供給の異常としての血管障害、外傷、感染や自己免疫的機序など、様々な機序が関与するといったことがあります。神経細胞そのものが、エネルギー要求が高いとために、さまざまな環境変化に対して脆弱で、受けた侵襲の程度により、病変の重症度・広がりも多様になり、同じ疾患であっても症状には幅が出ます。
 また、小児期の特性として、発達・成長に伴い病態が変化すること、小児自身が周囲の環境に適応しようとして学習し、症状に変化が生まれることがあります。原因疾患として、脳形成障害や水頭症、先天代謝異常、周産期脳障害などは、小児期に発症することが多く、まず小児科医が診療します。また、イオンチャンネルや神経伝達物質の代謝・分泌に関わる異常により発症するてんかんや不随意運動も、小児神経科医が良く遭遇する疾患です。このように小児神経疾患は、神経と小児期という2つの要素がからみ、非常に幅の広い疾患群となっています。ただ、種類は多いのですが、疾患ごとの患者さんの数は少ないことも多く、まだ研究すべきこと・解明できていないことはたくさんあるというのも実情です。
そして、成長・発達の途上にある小児の診察・評価・治療は、病院小児科と家庭の中で完結するものではなく、関連する他科との連携、地域の療育施設や特別支援学級・学校、就労支援、自治体の各種福祉制度など、広い視野で評価する必要があります。
 小児神経疾患には、まだ治療が難しく、完治に至らない疾患も多く存在します。しかし、より良い生活・発達を目指した一つ一つの診療が、患者さんにとっては重要な治療であると同時に、その過程・結果を検討することが、さらに良い治療を生み出すための研究となると信じて、診療・研究を行っています。

 当科では、小児神経疾患全般の診療を行っていますが、現在、当科では、特に次のようなテーマに取り組んでいます。
1) 難治性てんかん:診断・てんかん外科適応の判断・ケトン食療法
2) グルコーストランスポーター1欠損症の診断・治療(遺伝子診断)
3) West症候群の原因疾患別の治療戦略の構築
4) 若年性皮膚筋炎のステロイドとメソトレキセート併用療法
5) 結節性硬化症に合併するてんかん・全身合併症の治療

【てんかん】
当院てんかんセンターの診療の一部を担っています。てんかんは、さまざまな病型があり、発作症状や脳波所見をもとに、正確な症候群診断をつけることが重要です。必要に応じて長時間ビデオ脳波を用いて発作時の脳波を補足します。原疾患に応じて、適した抗てんかん薬を選んで治療します。
《West症候群》 乳児期に発症する代表的な難治てんかんです。長時間ビデオ脳波を用いて確実に診断した後、MRIを用いて原因疾患を検討して、疾患ごとに最適の治療法を選択します。一般的には、ビタミンB6、ゾニサミド、短期隔日ACTH療法を順次行いますが、皮質形成異常などでは焦点精査の上、乳児期に当院脳神経外科にててんかん外科手術を行い、良好な治療成績を得ています。
《難治てんかん》 2000年代になって入手可能となったさまざまな新規抗てんかん薬や、ケトン食療法といった食事療法も選択肢として、最適な治療法を選びます。また、現在も新規抗てんかん薬の治験を行っています。てんかん外科手術の適応が考えられる症例については、脳波・MRIに加えて、発作間欠期脳血流ECD-SPECT、IMZ-SPECT、発作間欠期FDG-PET、脳磁図を適宜行っててんかん焦点の解析を行います。発作回数が多い場合には、発作時脳波や発作時ECD-SPECTも加えて、より正確な焦点解析を行います。定期的に開かれるてんかんセンターカンファレンスで症例検討を行い、治療方針を決定しています。
 先進的な試みとして、頭皮脳波の高周波解析により発作焦点を推定する研究も行っています。
《Rasmussen症候群》 自己免疫的な機序により、片側性にてんかん焦点を生じ、徐々に進行する難治性のてんかん症候群です。以前は診断のために脳組織を切り取って調べる脳生検が必要でしたが、近年、画像と臨床症状で診断する診断基準が提唱され、典型例は脳生検が不要となっています。通常の抗てんかん薬だけでは進行を止めることはできず、副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤の併用が必要です。当科では、病初期にステロイドパルス療法とタクロリムスを併用する治療を行うことで、初期の悪化を最低限に抑えられています。

【グルコーストランスポーター1欠損症(Glucose transporter 1 deficiency syndrome)】
 脳は体内の20%近くのエネルギーを消費する臓器で、そのエネルギーのほとんどをブドウ糖(グルコース)によりまかなっています。しかし、脳内の微小血管で血液から脳実質にグルコースを運ぶことのできるタンパクは1種類しかなく、それがグルコーストランスポーター1(Glut-1)です。Glut-1欠損症では、このタンパクの活性低下により、精神運動発達遅滞、運動失調、不随意運動、難治性てんかんを来します。特に、こうした症状が空腹時や運動後、疲労時に悪化することが特徴で、食事や休息で症状が軽減します。Glut-1欠損症の診断は、髄液と血液の検査をし、最終的には遺伝子診断で確定します。治療は、ケトン食療法を行います。
 当科では遺伝子診断を行っています。また、国内では最多の患者さんのフォローを行い、ケトン食療法の調整・指導をしています。ケトン食療法を長期間行うため、その影響についても研究しています。患者会もあり、当科の医師2名が顧問医師を務めています。

【神経筋疾患】
・筋疾患:生後より筋力が弱く運動発達の遅れを認める場合や、徐々に筋力低下・筋痛を訴え運動機能の低下を認める場合には、先天性筋疾患の可能性があります。福山型筋ジストロフィー、デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィーなどの筋ジストロフィーや先天性ミオパチー、筋型糖原病など多くの筋疾患があります。臨床神経グループでは筋疾患の疑いのある患者さんの診療を行っています。血液検査をはじめ、必要があれば遺伝子検査や、筋肉の組織を直接に評価する筋生検も行い診断しています。
・若年性皮膚筋炎:自己免疫性の機序により筋炎を生じる疾患で、特徴的な紅斑の他、発熱、易疲労性、筋痛、関節痛などの症状を呈します。血液検査のみでは異常を認めないことも多く、診断の難しい場合もある疾患です。確定診断には筋生検を行います。治療は副腎皮質ステロイドを用います。従来、筋の炎症を抑制するために、高用量の副腎皮質ステロイドが用いられてきました。臨床神経グループでは、副作用を軽減するために免疫抑制剤の一つであるメソトレキセートを治療早期から併用しています。筋炎症状を早期から寛解に持ち込み、ステロイドの副作用を軽減して治療効果を得ることができています。

【結節性硬化症】
 結節性硬化症(TSC)はTSC1, TSC2の遺伝子異常によっておこる疾患で症状はてんかん・皮膚病変・心臓腫瘍・腎臓血管筋脂肪腫(AML)・知的障害など全身の様々な臓器にわたります。2012年にmTOR阻害薬がTSCのSEGAとAMLの治療薬として認可されました。
 当院ではTSCの治療に関して他の診療科と定期的な症例検討会を設け、よりよい全身的な治療方針を検討するように体制を整えています

【脳性麻痺に対するボトックス治療】
 脳性麻痺、進行性の神経変性疾患・脱髄疾患、遺伝性ジストニアの患者さんでは異常な筋肉の緊張を伴うことが多く、発熱、疼痛、不眠、胃食道逆流、側わん、呼吸障害の原因となることが知られています。 経口の筋弛緩薬での治療で効果が不十分な場合にボツリヌス療法を選択することがあります。ボツリヌス療法(ボトックス)はボツリヌス菌が作り出す毒素を異常に収縮する筋に筋肉注射することで神経と筋肉の間のアセチルコリンの放 出を妨げて筋肉の収縮を抑える治療法です。この薬の効果は2-3日から現れ3ヵ月ほど持続しますので、3-4ヵ月ごとに症状をみながら筋肉注射を繰り返すことになります。
当科では痙性斜頸・上肢痙縮・下肢痙縮に対してボツリヌス療法を行っています。

・当施設は日本小児神経学会専門医が6名(当グループは4名)在籍し、小児神経科専門医研修認定施設に認定されています。
・当施設は日本てんかん学会臨床専門医が3名在籍し、日本てんかん学会の研修施設に認定されています。

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