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教授挨拶

1) 先天性GPI欠損症 (Inherited GPI deficiency: IGD)の臨床研究  

 GPI(glycosyl phosphatidyl inositol)は、細胞表面にタンパクをつなぎとめる糖脂質です。粗面小胞体内で、phosphatidyl inositolというリン脂質を土台に、そこに次々に糖をつなげる生合成により合成され、最後に機能蛋白を結合させて完成した後、細胞表面に運ばれます。この合成系の酵素が先天的に欠損するのがIGDです。IGDでは、様々な程度の知的障害・運動障害、てんかん、口唇口蓋裂やHirxhsprung病、鎖肛といった消化管奇形や心奇形、腎尿路奇形、手指・足趾低形成など、様々な症状を呈します。2006年に、世界で初めてIGDの患者さんが診断されてから、200名程度の患者さんが報告されていますが、疫学や臨床像の全貌を含め、未だ解明されるべきことが数多くあります。図
 重要な抑制性神経伝達物質のGABAが合成には、ビタミンB6が必要です。通常のビタミンB6はリン酸が結合しており、ビタミンB6を細胞内に取り込む時にはGPI結合型タンパクであるalkaline phosphatase (ALP)が、結合したリン酸を外すことが必要です。IGDでは、GABA合成が減少していると考えられます。実際、IGDに合併した難治てんかんが、ALPを介さずに神経細胞に取り込まれるビタミンB6誘導体を大量投与して、著明に改善した報告がなされました(Kuki, et al. Neurology 2012)。
 GPI生合成経路は、大阪大学微生物病研究所の村上良子先生、木下タロウ先生のグループが世界に先駆けて研究され、今でも機能解析は、この研究室しかできません。私たちは、村上先生たちと協力して、新しい患者さんを診断してきました。私たちは、GPI生合成経路の酵素の1つであるPIGO欠損の6例を報告しました(Tanigawa J, et al. Hum Mut 2017)。臨床像は非常に幅広く、重度知的障害と難治性てんかんを呈して乳児期早期に感染症により死亡する重症例から、鎖肛と学習障害のみを呈する軽症例まで、重症度は様々であること、細胞表面に発現したGPIアンカータンパクの発現量と重症度に対応があることが判明しました。
 現在、私たちは、ビタミンB6を投与する前方視的臨床研究を行っており、今後、データベースの整備による臨床像の解明、疫学研究を行っていく予定です。

2) グルコーストランスポーター1欠損症(GLUT1欠損症)の臨床研究
 GLUT1欠損症は、1991年に報告された疾患で、脳の主たるエネルギー源であるグルコースを血液中から脳内に取り込むために必要なGLUT1の機能が低下し、知能障害、てんかん、麻痺や不随意運動といった運動障害などを呈する疾患です。脳は、グルコース以外のエネルギー源としてケトン体を利用できるため、ケトン体をたくさん産生できるケトン食療法を行うと、症状が改善します。  大阪大学は、国内でこの疾患を初期から診療しているグループの1つで、現在、30名を超える患者さんと連携して、臨床像の解析と遺伝子解析、長期にわたるケトン食療法の安全性の検討、負担の少ない治療法の開発に取り組んでいます。

3) てんかん
 大阪大学にはてんかんセンターがあり、数多くの難治性てんかんの患者さんが紹介されてきます。図
・ 脳磁図解析
 難治性てんかんの患者さんの中には、脳形成障害や血管障害・損傷などで、脳の一部が障害されていて発作が止まらない人がおり、てんかん外科手術で病巣を切除することで、てんかんが治癒・軽減する人がいます。病巣の部位を同定するために、さまざまな検査を行いますが、その一つに脳磁図があります。これは、脳内を微細な電流がどこで流れたのかを、頭皮の磁場の変化を捉えて推測する検査法です。私たちは、その中でも周波数の早い高周波と呼ばれる脳磁図変化が、てんかん原性焦点部位を同定するのに有用なことを報告しました(Iwatani Y, et al. Epilepsy Res 2012)。
・ マイクログリアPET
 近年、てんかんを起こしている部位では、炎症性サイトカインが分泌されており、またその炎症性サイトカインが神経細胞の興奮性を惹起しててんかん発作を起こしやすくしていることがわかってきました。中枢神経内で炎症に重要な役割を果たすマイクログリアが活性化した部位を可視化できるマイクログリアPETを用いて、てんかん原性焦点を同定する研究を開始しています。

4) 神経希少疾患の臨床研究
 神経細胞は、活動電位が発生して脱分極・再分極をするたびに細胞膜内外でイオン勾配を再形成する必要があり、多大なエネルギーを消費します。また、興奮を遠隔地に伝えるために、細胞体と樹状突起、長い軸索を備え、その先端にエネルギー消費・物質代謝の盛んなシナプスがあります。こうしたことを考慮すると、神経系は絶妙なバランスのもとに機能を保っていて、それが少し崩れると、すぐに機能異常を呈することがわかります。実際、神経疾患の原因は多彩で、人数も多く、とりわけ、小児神経疾患はさらに多様で、稀少疾患が多いです。近年、遺伝子解析技術が進み、これまで原因不明とされてきた患者さんの原因・病態が判明することが増えています。これまでは詳細な臨床観察により病像が明らかになってから原因や遺伝子が分かることが普通でしたが、これからは逆に遺伝子が先に判明して、その後臨床像が明らかになることも増えてきそうです。
 私たちは、神経疾患の患者さんの中でも稀少疾患の患者さんの病態を理解して、治療に結び付けたいと考えています。

【関連サイト】
附属病院てんかんセンターホームページ 

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