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教授挨拶

発達障害・睡眠グループ 研究紹介

当グループは、小児期の睡眠障害と発達障害の臨床/研究を専門としております。

1)広汎性発達障害、注意欠陥/多動性障害 (ADHD)等の発達障害は、今、広く世間の注目を集めています。これらの特性を持つこどもは、その頻度が高いことが近年わかってきました。はっきりとした遅れはないが、何となく育てにくく、集団生活が難しいこれらの子どもたちは、個々のニーズに応じた教育や対応がなされないと学校で落ちこぼれきやすく、 大きなこころの負担をかかえながら社会生活をおくることが多いと言われ、思春期・成人期における不適応や「引きこもり」、反社会的行為等の二次障害につながる可能性があることが知られています。ところが、発達障害の病因に関してはまだ不明の点が多く、生物学的指標もないことが、早期発見を妨げ、教育/療育 上の大きな支障となっています。
当グループでは、発達障害の診断と指導、また、先端的な手法を用いて障害特性を明らかにする研究に取り組んでおります。(参照:子どものこころの分子統御機構研究センター)

2)小児期における睡眠障害は、成人の睡眠障害の様に昼間に眠くなるだけでなく、成長や発達に大きな影響を与えることが知られています。心身のリフレッ シュメント、記憶の固定、免疫の強化等、睡眠の重要性は今さら言うまでもありませんが、特に子どもは大人に比べて長時間の深い眠りが必要であることがわ かっています。睡眠時間が短い子どもでは学業成績が悪いというアメリカ合衆国の高校生のデータがありますし、また、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の子どもでは 発達遅滞や学業不振、注意力低下、衝動性、攻撃性等の認知・行動面での合併症が多いとされています。このような行動面での異常が発達障害児の臨床症状に似 ているということは、多くの研究者の注目を集めております。睡眠不足が長期間続いた場合、または睡眠障害が適切に診断・診療されなかった場合、子どもの神経に永続的な変化がおこる可能性もあります。私たちのグループは小児睡眠外来を 開設して、専門的な診断・治療を行っています。また、睡眠障害を持つ広汎性発達障害児は決してまれではありませんが、その病因や病態はよくわかっていませ ん。私たちは、発達障害児に何故、睡眠障害が多いのか、どのように対処してあげるのが発達の面から適切なのかということを研究していきたいと考えています。

3)当グループは神経科学研究を行っているグループです。従来の研究成果は以下の通りです。
I 神経炎症メカニズムの解明
脳における主要なプロスタグランジンであるプロスタグランジンD2(PGD2)は生理的な状態で自然の睡眠を誘導すると考えられています。しかしながら、 慢性的な神経疾患において、PGD2は脳における免疫担当細胞であるミクログリアやアストロサイトの活性化を促して、炎症反応を増悪させることがわかりま した。これは、クラッべ病のモデルマウスやアルツハイマー病(ヒトとそのモデルマウス)で確かめることができました。実際、クラッベ病のモデルマウスで PGD2産生抑制剤を使用すると、神経病理は軽減いたします。これらのPGD2産生抑制剤はこれらの疾患の治療薬になる可能性があります。

・Mohri et al. Hematopoietic prostaglandin D synthase is expressed in microglia in the developing postnatal mouse brain. Glia, 42(3): 263-274. 2003.
・Mohri et al. Prostaglandin D2-mediated Microglia/Astrocyte Interaction Enhances Astrogliosis and Demyelination in Twitcher. J Neurosci 26(16):4383-93, 2006.
・Mohri et al. Hematopoietic prostaglandin D synthase and DP1 receptor are selectively upregulated in microglia and astrocytes within senile plaques from human patients and in a mouse model of Alzheimer disease. J Neuropathol Exp Neurol. 2007 Jun;66(6):469-80.

 ところが、PGD2は低酸素性虚血性脳症(新生児仮死はその一つです)の場合には、血流を保って虚血性の病変を小さくするように働く ことがマウスのモデルにおいて示されました。医療が進んだ現代においても低酸素性虚血性脳症は一定のリスクで発生し、脳性麻痺や精神遅滞等の後遺症に苦し んでいる家族が少なくありません。PGD2の働きを強めるような薬剤は既に開発されており、もしもこれらの薬が新生児仮死後の後遺症を軽減することができ れば、我々開発に関わったものは小児科医冥利につきると言うものでしょう。

・Taniguchi et al. Prostaglandin D2 protects neonatal mouse brain from hypoxic ischemic injury. J Neurosci. 2007 Apr 18;27(16):4303-12.

 また、PGD2はDuchenne型筋ジストロフィーでも産生が増えています。増加したPGD2は筋壊死の程度をひどくすることがモデルマウスの実験からわかってきました。実際に、このマウスにPGD2産生抑制剤を与えると、筋肉の壊死を軽減できる事を発見しました。

・Mohri I, Aritake K, Taniguchi H, Sato Y, Kamauchi S, Nagata N, Maruyama T, Taniike M, and Urade Y. Inhibition of prostaglandin D synthase suppresses muscular necrosis. Am J.Path. 2009;174(5):1735-44.
・Okinaga et al. Induction of hematopoietic prostaglandin D synthase in hyalinated necrotic muscle fibers: its implication in grouped necrosis. Acta Neuropathol 104: 377-384. 2002
・谷池 その他。 ジストロフィン異常症におけるプロスタグランジンD合成酵素の発現. 厚生省精神・神経疾患研究8~10年度研究報告書 筋ジストロフィー及び関連疾患の臨床病態と治療法に関する研究 Page30-32. 1999.

 最後に、複雑な話になりますが、PGD2産生酵素のひとつであるリポカリン型PGD2産生酵素(L-PGDS)は脱随、変性、低酸素等、いろんな良からぬ 刺激を受けた脳において産生が増え、どうも良からぬ物質と結合して脳を守っているのではないかということを我々は見つけました。低酸素等の刺激を与えてわずか15分後には神経細胞での産生が増えます。このようなストレス蛋白としての性質を利用して強いストレスを受けた脳の場所を見つけることができるかも知 れません。実際に、我々は、乳児突然死症候群で亡くなった赤ちゃんの脳で、呼吸や循環、覚醒等に影響を与える脳幹にL-PGDSが増えていることを見つけ ています。

・Taniike et al. Perineuronal oligodendrocytes protect against neuronal apoptosis through the production of lipocalin-type prostaglandin D synthase in a genetic demyelinating model. J Neurosci 22: 4885-4896. 2002.
・Kagitani-Shimono et al. Lipocalin-type Prostaglandin D Synthase (beta-trace) is Upregulated in the B-crystallin-positive oligodendrocytes and astrocytes in the chronic Multiple Sclerosis. Neuropath Appl Neurobiol 32:64-73. 2006
・Mohri et al. Lipocalin-type Prostaglandin D Synthase Is Upregulated in Oligodendrocytes in Lysosomal Storage Diseases and Binds Gangliosides. J Neurochem 97(3):641-51, 2006.
・Kanekiyo et al. Lipocalin-type prostaglandin D synthase/beta-trace is a major amyloid beta-chaperone in human cerebrospinal fluid. Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 Apr 10;104(15):6412-7.
臨床研究では自閉症スペクトラム障害児の運動機能や聴覚過敏がどのようなメカニズムで起こるかを解析しています。
・ Hanaie et al. Altered Microstructural Connectivity of the Superior Cerebellar Peduncle is Related to Motor Dysfunction in Children with Autistic Spectrum Disorders. Cerebellum. 2013 in press.
・ Matsuzaki et al. Differential responses of primary auditory cortex in Autism Spectrum Disorder with auditory hypersensitivity: A magnetoencephalographic study. Neuroreport. 2012;25;23:113-8.

Ⅱ 睡眠の発達に及ぼす影響についての臨床研究
 睡眠についての臨床研究では以下のことを行っております。
 睡眠障害・睡眠不足は日中の情緒・行動だけではなく、肥満、耐糖能、インスリン抵抗性にも影響を及ぼすことが研究されております。我々は、重症閉塞性睡眠 時無呼吸症候群の寝たきりの37歳女性(重症心身障害)に経鼻的持続陽圧呼吸療法(nCPAP)を導入し、栄養摂取量が一定であるにも関わらず、治療導入後に体重が減少したことを報告しました。
・Kato-Nishimura et al. Body weight reduction by CPAP treatment in a bedridden patient. Sleep Med. 2008;9(2):207-8.
また、近年レストレスレッグズ症候群が不眠の原因として知られてきております。我々は小児でも多くみられ、鉄剤が有効であることを報告しました。
・ Mohri et al. Evaluation of Oral Iron Treatment in Pediatric Restless Legs Syndrome (RLS). Sleep Med. 2012;13(4):429-32.
・レストレス・レッグズ症候群, 毛利育子、チャイルドヘルス 10(9):13-14. 2007.
・子どもの睡眠時無呼吸症候群、加藤久美、チャイルドヘルス 10(9):12-13. 2007.
・発達障害児における睡眠障害、谷池雅子、チャイルドヘルス10(9):14-15. 2007.
・谷池 他. 小児科領域の睡眠呼吸異常 立花直子編、睡眠医学を学ぶために 専門医の伝える実践睡眠医学、永井書店、306-312,2006.
・南保 他 編、パルスオキシメトリ アトラス、小池メディカル、1-38,2006.
・Kato-Nishimura et al (2008) Body weight reduction by CPAP treatment in a bedridden patient. Sleep Med 9:207-208
・Nabatame S, Taniike M, Sakai N, Kato-Nishimura K, Mohri I, Kagitani-Shimono K, Okinaga T, Tachibana N, Ozono K. Sleep disordered breathing in childhood-onset acid maltase deficiency. Brain Dev. 2008 May 19.
・Mohri I, Kato-Nishimura K, Tachibana N, Ozono K, Taniike M. Restless legs syndrome (RLS): an unrecognized cause for bedtime problems and insomnia in children. Sleep Med. 2008 Aug;9(6):701-2.
・Restless legs症候群、毛利育子、Clinical Neuroscience 27(2):176-180. 2009.
レストレスレッグズ症候群や睡眠時無呼吸症候群など、小児にも早期発見すべき睡眠障害があります。治療に早くつなげるため、スクリーニングする方法として、小児の睡眠質問票を開発しました。 子どもの眠りの質問票 (http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kokoro/JSQP20130822.pdf)に飛ぶように設定してください。
・三星ら.日本版小学生睡眠質問票の開発 小児保健研究. 2013 in press.
・Shimizuet al. Psychometric Properties and Population-Based Score Distributions of the Japanese Sleep Questionnaire in Preschool Children. Sleep Medicine. in press.
・ 三星ら。日本の幼児の睡眠習慣と睡眠に影響を及ぼす要因について.小児保健研究 2012;71:6:808-816.
・ 清水ら. 日本版幼児睡眠質問票の開発 小児保健研究 2010; 69;6, 803-813.

 睡眠関連疾患の治療前後での、日中の情緒・行動等がどう変化するのか、体動解析による睡眠評価法の開発、小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群と骨計測による顎形態との関連など、様々な研究を行っております。

 我々の研究や臨床に興味を持たれた方は、いつでもご連絡ください

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