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私達は細胞興奮を担うイオンチャネルに関する種々の研究をしています。

イオンチャネルの研究は最初細胞の電気的興奮を計測することから始まりました。イオンチャネルという膜蛋白の存在はイカの巨大神経軸索での活動電位成立のメカニズムとしてHodgkinとHuxley(1952)によりその概念が初めて提出され、NeherとSakmann(1976, 1981)によるパッチクランプ法によりその正しさが実証されました。ニコチン性アセチルコリン受容体のcDNAが今は亡き沼正作らにより1982年に単離され、イオンチャネルが実体としてとらえられるようになりました。それ以降、種々の電位依存性・非依存性イオンチャネル、受容体チャネルや水チャネルの遺伝子が次々とクローン化され、それらの分子の一次構造や機能が明らかになってきました。この15年あまりは膜の興奮現象がどんどんその実体的基礎を確立してきた時代でした。

イオンチャネルの研究が最近さらに熱を帯びてきています。それはこの分野でいくつかの重要な進展があったからです。それらは(1)1990年代に入り、遺伝子targettingによりイオンチャネルの機能が個体レベルで解析されるようになってきたこと、(2)多くの遺伝性疾患がイオンチャネルの遺伝子異常によって起こることがわかり、channelopathyという概念が確立したこと、(3)イオンチャネルの細胞内局在制御機構などがあきらかとなりつつあり、脳の記憶などの高次機能や上皮組織のベクトル輸送などを実体的に明らかにして行くframeができてきたこと、(4)イオンチャネルの結晶化とその解析から分子構造が明らかになり出したこと、などです。

最近のイオンチャネルを巡る研究では、細胞イオン信号の制御のために多くの蛋白が実にダイナミックに働いているということを実感できるようになってきました。何か生きた細胞のなかの拡大映像をみているようなvividな感覚さえあり、非常な感動を覚えています。細胞内あるいは細胞間のコミュニケーションの手段として無機イオンの信号をどのような機構で、どこで、どのように利用しているのか?その機構を成立させている分子機構はいったいどういったものなのか?また、その異常がどのようにして疾患を引き起こすのか?その異常を治療する方法は?といった様々な疑問を解決したいと私達は研究を行っています。当面の目標は、原子のレベルでイオンチャネルを語れるようにすること、そして、イオンチャネルの組織機能における役割を実体的にあきらかにすることが目標です。

(2000年6月,教授 倉智 嘉久)

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