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【6】チャネル・活動電位モデルとシミュレーションによる統合的理解

(1) L型カルシウムチャネルのモデル化

細胞表面のL型カルシウムチャネルは、電位依存性およびCa2+依存性の不活性化機構が存在し、細胞へのCa2+イオンの流入を調節をしています。これら不活性化機構の精緻なモデル化は、心筋細胞のカルシウム動態を扱う上で不可欠です。この不活性化機構を、実験結果に基づいて詳細にモデル化を行いました。

  LCa2

LCa3


不活性化機構は、VDI(電位依存性不活性化)とCDI(Ca2+依存性不活性化)があります。これらの不活性化過程には、複数の速度成分があるため、モデル化において、各成分を分けた形で行っています。また、イオンの透過についても、一価イオン電流を考慮しています。

また、β刺激条件においては、チャネル電流は増加するとともに、decayは早くなり、VDIは弱まります。この実験結果に基づき、controlとβ刺激条件の双方に対してモデル化を行いました。


その結果、右図のように、controlとβ刺激条件下の双方に対して、voltage clamp実験における電流と極めて良く一致するモデル化を行うことができました。今後は、細胞内微細構造まで考慮して、カルシウム動態モデルの構築を行うのが目標です。


(2) IKrブロッカーの心房細胞に対する作用動態

IKrブロッカーは、心房細動などの心房における不整脈の治療に用いられるが、一方で、しばしば薬物性致死性心室不整脈を誘発します。この研究では、心房活動電位におけるIKrブロッカーの効果をシミュレーションによって予測することを目的としました。特に逆頻度依存性のAPD延長作用に注目して、Courtemanche等の心房筋細胞活動電位モデルを改良し、様々な阻害作用動態を持ったIKrブロッカーの効果の検討を行いました。

まず、Courtemanche等の心房筋細胞活動電位モデルは、頻脈の条件下におけるIKsの活性化状態の蓄積が見られず、むしろIKs電流が減少するという問題があったため、IKsに対するゲーティング機構の改良、すなわち、IKsの遅い活性化機構を導入したモデルの作成を行いました。

atrial1
atrial2
ドフェチリド、キニジン、ベスナリノンによる活動電位の変化、およびunblocked fractionの変化。
各薬物存在下でのAPD、およびその変化率。

このモデルで活動電位シミュレーションを行ったところ、上図のように頻脈におけるIKs電流の蓄積と、薬物効果の逆頻度依存性を再現することができました。またブロックの時定数の長いベスナリノンは、速いキニジンや、電位に依存しないドフェチリドで見られる逆頻度依存的なAPD延長を示しませんでした。

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