大阪大学大学院医学系研究科 核医学講座 / 大阪大学医学部附属病院 核医学診療科・放射線部 Department of Nuclear Medicine and Tracer Kinetics, Osaka University Graduate School of Medicine
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核医学講座のあゆみ
2009年から2014年まで

核医学講座の大学院を修了した医師が主役になって診療・教育・研究に活躍するようになりました(加藤弘樹先生、礒橋佳也子先生、渡部直史先生)。2002年に赴任した当時、放射線科専門医は畑澤1人でした。現在は在籍する医師全員(10名)が放射線科専門医・核医学専門医です。2009年に開講した医薬分子イメージング学寄附講座(渡部浩司准教授、2013年に東北大学に転出、金井泰和助教)は、同時期にオープンした大阪大学大学院医学系研究科附属PET分子イメージングセンターの運営を担ってきました。同センターは2014年9月から信頼性基準に基づいた運用が始まり、学外や企業の利用が順調に増加してきました。年間必要経費は利用料でまかなうことができるようになりました。大阪大学医学部附属病院PET診療施設は、2013年に臨床研究専用のPET-CTを導入し、標識合成室の改修を終え、治験薬GMPによる運用を開始しました。必要経費はすべて病院予算から支出しています。また、4台のSPECTをすべて更新し、そのうち2台はSPECT-CTです。PETだけではなくSPECTも形態画像と機能・代謝画像の統合画像診断の時代になりました。  2011年3月の東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故は核医学診療に少なからぬ影響を与えました。核医学講座として、放射線災害にどのように対応できるのか、また一般社会にどのように正しい情報を伝えるのか、大変苦労しました。これを契機に、モニタリング機器の開発、土壌汚染、食物汚染の評価、内部被曝の評価、放射線防護服の開発など、関西の企業と共同して開発に取り組みました。α線β線γ線同時検出器は米国のマスコミにも取り上げられました。英国からも問い合わせがありました。一方、アカデミアの知財が実社会に役立つまでのプロセスの困難さ、バリアも経験しました。核医学専門医は、内部被曝の専門家でもあります。この専門家集団は、放射線災害からの復旧・復興に重要な役割を果たすと思います。  海外への情報発信が活発になってきました。大阪大学での診療経験、臨床研究、基礎研究の成果を世界に向かって発信する機会が増えました。海外の学会(SNMMI、EANM、アジアの学会など)での発表が増えてきました。多くの訪問者・見学者が阪大を訪れるようになりました。研究者の交流、海外の学会での発表、外国人研究者の受け入れなど、これまでとは格段に幅広くなりました。2010年2月、2011年1月には大阪でPET/MRIの国際シンポジウムを主催しました。2014年4月にはアムステルダム自由大学の大学院修士課程の学生28名と引率の教授が来訪し、当講座のスタッフが講義、見学、懇親会などを企画しました。畑澤は2013年12月、Asian Regional Cooperative Council for Nuclear Medicine(ARCCNM、アジア地域核医学協議会)の議長に指名されました。

国際化の中で感じたのは、核医学内用療法の進歩です。α線核種(223Ra)の臨床応用が試みられており、画期的なことです。ホウ素中性子捕捉療法なども含め、放射性同位元素を利用した悪性腫瘍の治療が核医学のアイデンティティを高めることになると思います。 核医学の診療と研究を担うスタッフは、教授1(畑澤)、准教授1(下瀬川)、寄附講座准教授1(渡部浩司、東北大に転出)特任准教授1(阿部)、放射線部講師1(巽)、助教2(加藤、礒橋)、特任助教1(石橋)、寄附講座助教2(渡部直史、金井)、大学院博士課程(持田、渡辺、花岡、松永、森田、神谷)、薬剤師1(仲)、特任研究員2(堀次、池田)です。イエメンの医師1名(GA)を大学院博士課程に受け入れました。医学部学生(MD PhDコース)1名(青木)、基礎配属医学部学生2名が研究に参加しています。

2006年から2009年まで

この間の大きな出来事は、1) 臨床用PET-CT装置の導入(2007年4月から)、2) PET-CTによる脳循環代謝研究の展開(同)、3) 大学院医学系研究科修士課程科目「PET分子イメージング講座」開講(2007年8月から)、4) 医学系研究科共同利用施設PET分子イメージングセンター新設(2009年9月着工、2010年4月竣工予定)、5) 医薬分子イメージング学寄附講座(塩野義製薬)開講(2009年10月)、6)動物用超高分解能半導体PETの開発(2006年〜)、7)動物用PET-MRIの開発(2007年〜)、8) I-124核種の生成と標識(2007年〜)、9) 医薬品標識と体内動態解析法の開発(2008年〜)、10) 大阪大学医学部附属病院臨床試験センター高度臨床試験部門開設(PET・SPECTを利用した臨床試験を担当する部門、2008年〜)、11) 世界トップレベル研究拠点大阪大学フロンティア免疫学研究センター核医学部門開設(2009年〜)、12) 国際交流(タイ王国Mahidol大学、2009年〜)、13) 第21回日本脳循環代謝学会主催(2009年11月)、などです。

PETによる診療と研究を担うスタッフは、教授1(畑澤)、准教授1(下瀬川)、寄附講座准教授1(渡部浩司)、特任准教授1(阿部)、放射線部講師1(巽)、特任講師2(今泉、加藤)、助教1(井上)、寄附講座助教1(金井)、医員3(大学院博士課程、中城、礒橋、渡部直史)、放射線部薬剤師1です。来年度は大学院博士課程に1名の放射線科医を受け入れます。さらに、研究生1名、大学院修士課程学生2名、医学部学生4名が研究に参加しています。

核医学教育

核医学に関係する教育カリキュラムは、多岐にわたっています。医学部学生教育は1年次に医歯学序説(生体イメージング、畑澤)、3年次基礎配属(選択必修)、4年次臨床講義・ポリクリ(下瀬川)などです。大学院教育では、2003年から2009年まで14名の医師が博士課程を修了しました。阪大、兵庫医大、国立循環器病センター、大阪市内の病院で活躍しています。4名は海外の研究機関(NIMH、Cambridge大学、アムステルダム自由大学、Hammersmith病院)に留学しさらに専門性・国際性を高めて帰国しました。グローバルCOE(認知脳理解に基づく未来工学創成(下瀬川)、医・工・情報学融合による予測医学基盤創成(畑澤))の教育・研究に参画しています。社会人教育は、多数の製薬企業、核医学機器関連企業の研究員を対象にPET分子イメージング学の講義を行っています。

核医学診療

PET検査の週間予定を下に示します。FDGによる悪性腫瘍診断は年間約3000例、O-15による脳循環代謝検査が年間約250件です。2007年から核医学診療科に看護師1名が新たに配属されました。

  機種 主な検査 件数など
PET I
PET II
脳神経系(FDG)
悪性腫瘍(FDG)
てんかんなど
1日12例
PET I
PET II
新規トレーサ
悪性腫瘍(FDG)

1日12例
PET I
PET II
脳神経系(15O)
悪性腫瘍(FDG)
1日〜3例
1日12例
PET I
PET II
悪性腫瘍(11C)
悪性腫瘍(FDG)
1日〜6例
1日12例
PET I
PET II
脳神経系(15O)
悪性腫瘍(FDG)
1日〜3例
13NH3心筋血流
PET Iは島津製作所社製Eminence G、PET IIはPhilips社製Gemini GXLです。

一般核医学検査は、核医学診療科の他に循環器内科、内分泌内科、乳腺外科、整形外科、脳神経外科など多数の診療科が担当しています。SPECT装置は4台すべて更新され2検出器型ガンマカメラになりました。骨シンチが1500件で最も多く、次いで脳血流シンチ700件、心筋シンチ(循環器内科担当)600件が中心です。SPECT-CT(Siemens社製Symbia)導入後、CT画像との重ね合わせにより診断精度が格段に向上しました。89Srや90Yによる内用療法の準備が完了しました。2010年には本格的に開始する予定です。核医学画像はすべて電子化され、主治医は外来や病棟のモニターで検査結果報告書、過去の放射線診断画像とともに簡便に閲覧できます。

臨床研究

臨床研究は、臨床研究倫理審査委員会に申請し承認を得て行います。新しい撮像機器、検査法が導入された時に、正常画像(FDG)と正常値(脳血流量、脳血液量、脳酸素摂取率、脳酸素代謝、血管反応性)を提供することは核医学診療科の重要な仕事です。これまで、15O脳循環酸素代謝検査、脳血流SPECT検査(ARG法および血管反応性)、脳ブドウ代謝検査などの正常被験者データベースが完成しました。正常値は検査結果報告書に記載されています。また、13NH3による心筋血流測定、11C酢酸など保険適用外の検査を行っています。

患者さんを対象にした臨床研究は、阪大で開発された新しい治療法(移植心、心筋シート、ペプチド免疫療法、消化管間質腫瘍へのイマチニブ)の効果の評価、薬物治療効果の評価を中心に行っています。臨床研究を計画した医師には、まず核医学講座・核医学診療科のカンファレンスで概要を説明していただき、検査技師、看護師、薬剤師も含めて研究の意義、被験者の負担、検査手順、標識薬剤、検査枠を討議します。その後、臨床研究倫理審査委員会への申請、利益相反の審議を経て承認されると(約1〜2ヶ月)、実際の研究が始まります。治療効果をPETやSPECTで評価する介入前向き臨床研究の場合は、臨床試験登録の対象となりますのでユーミンを利用し登録します。

現在、PETマイクロドーズ臨床試験実施のための基盤整備を進めています。ホットラボはGMP基準を満たさなければならず最大の障壁になっています。

臨床研究では、なによりも被験者の権利を保護しなければなりません。十分な説明と同意の下に行うことはもちろん、臨床研究に伴う不慮の事態に備えた補償制度を整備しなければなりません。核医学研究に対する補償の必要性、程度が議論されています。

基礎研究
1)固体ターゲットによる124Iの生成と標識

阪大核物理研究センターのAVF型サイクロトロンで124Iを生成し、123I標識薬剤を124Iで標識しPETで撮像しています。半減期が4日と長いので、投与後1週間は撮像できます。124Iは、タンパク質、ペプチド、免疫細胞の標識と追跡に適しています。

2)小動物用超高分解能半導体PET

1mm以下の分解能を持つ小動物用半導体PETが完成し、遺伝子改変マウス、疾患モデルマウス、ヌードマウスの撮像を行っています。18FDG投与後、マウスの大脳基底核、視床、海馬、大脳皮質が同定できます(Ishii K, et al. Nucl Med Instr 2008)。ラットやマウス脳のテンプレートを作成し、ヒトと同様な統計画像解析を目指しています

3)小動物用PET-MRIの開発

MRIは組織コントラストが高いので、PETとMRIの同時撮像によりトレーサ集積部位の位置情報を容易に得ることができます。0.3T永久磁石型MRIと光ガイドを組み合わせたPET-MRIが完成しました(Yamamoto S, et al. ANM 2010,in press)。今後、高磁場化を目指し機能解析に役立てたいと思います。また、臨床用PET-MRIの開発を目指しています。中枢神経系、頭頚部、縦隔、腹部、骨盤部の診断に役立つものと期待しています。

平成22年2月13日には第1回国際PET-MRIカンファレンスを大阪千里ライフサイエンスセンターで開催します。

4)薬物動態解析と薬効評価

医薬品の体内動態を解析し、最適投与量、投与法を探る研究を開始しました。対向型ポジトロンイメージング装置を用いて、秒単位の全身動態を解析しています(Hasegawa Y, et al. ANM 2008)。ラットの全身画像(11C標識フェニトイン)の全身画像を示します。トレーサ量下と薬理量下での動態が同一であることがPETマイクロドーズ試験の大前提ですので、この検証を行っています。

5)難治性悪性腫瘍の中性子捕捉療法

次世代放射線治療として中性子捕捉療法が注目されています。この治療法の3本柱は中性子発生源、腫瘍集積性の高いホウ素担体、腫瘍へのホウ素集積の評価です。中性子発生源は原子炉から加速器へと移行しつつあります。阪大病院で18FBPA-PETを行い、BPAの腫瘍集積を予測し適応例をスクリーニングする予定です。

この間、理化学研究所分子イメージングセンター(渡辺恭良センター長)、放射線医学総合研究所分子イメージングセンター(菅野巌センター長)、東北大学ラジオアイソトープセンター(石井慶造センター長)、神戸市立工業高等専門学校(山本誠一教授)、大阪大学核物理研究センター(岸本忠史センター長)、独立行政法人医薬基盤研究所、NIMH Molecular Imaging Lab(Dr. R. Innis, Dr. M. Fujita)からご指導いただきました。厚く御礼申し上げます。
(PET Journal 2009より抜粋)

2002年から2006年まで

大阪大学医学部は、1993年に大阪市内中心部の中之島から現在の吹田市山田丘に移転しました。万博記念公園の北、北摂の中心部にあります。新病院建設にあわせてPET診療棟が設置され、1995年PETによる臨床研究および診療が始まりました。当初、医学部バイオメディカル教育センタートレーサ情報解析学講座(西村恒彦教授、現京都府立医科大学放射線科教授)の指導の下、心臓・循環器、脳、腫瘍を中心に精力的に臨床研究が行なわれ、多くの分野で成果を挙げ多数の人材を輩出しました。

2002年6月に畑澤が赴任し、大学院医学系研究科生体情報医学講座へ、また2005年には核医学講座へと改組されました。PET研究を担う講座のスタッフは教授1(畑澤)、助手1(長谷川、専門は心臓核医学)、放射線部に講師1(奥、脳神経核医学)、医員1(樋口、腫瘍核医学)です。

核医学教育(PET教育)

核医学に関係するカリキュラムは、医学部生、大学院生、研修医、全学共通教育、社会人など、多岐にわたっています。大阪大学医学部では、学部生は3年次の10〜12月の3ヶ月間と4年次の4〜6月の3ヶ月間、基礎講座へ配属され研究室のスタッフや大学院生といっしょに生活します(基礎配属制度)。核医学は臨床講座に属していますが、一方で放射性同位元素は医学研究をする上で欠かすことのできない研究手法でもあるので、基礎講座と同様に基礎配属を受け入れています。各講座2名の定員に対し申し込みはいつも定員を超過し、毎回4〜5名の学生が在籍します。放射性同位元素、放射性医薬品、撮像装置(PETが中心)、データ解析を講義し、最近の総説を読みます。テーマを与え文献検索の仕方を教えます。期間が短いので、すでに蓄積されたデータを解析させ、研究会で発表します。コンピュータの取り扱いに慣れているので、ほとんどがSPM解析に興味を持ちます。学士入学の学生が多いので、中には「ポジトロンレンジの補正をテーマにしたい。」「TOF計測をしたい。」という空恐ろしい学生があらわれたりします。体育会系の学生は、「運動時の筋肉の活動を画像化したい。」といって自ら被験者になったりします。4年次の基礎配属では、仮説を設定し、SPM解析を実際に行ない、結果を抄録にまとめます。国際学会(Brain05)に応募し、2件の研究が採択されました。課題を設定し、データを解析し、論文にまとめるという作業は、研究のまねごととはいえ学生にとって貴重な経験です。現在までに医学部生が行なった核医学研究を以下に紹介します。

  • 脳死ファントムによる脳血流評価-FBP法とOSEM法の差について
  • アルツハイマー病の脳血流異常-SPM解析
  • 下肢運動にともなう筋のブドウ糖代謝
  • 健常成人女性の加齢に伴う脳血流変化-SPM解析
  • 健常成人における脳ブドウ糖代謝と脳酸素代謝-SPM解析(Brain05最優秀賞 受賞)
  • 小児期の脳血流変化-SPM解析

医学部生の核医学の臨床講義は4年次の後半に行なわれます。講義では、放射性医薬品、カメラ、特徴的な画像所見を概説し、詳細は臨床実習で行ないます。管理区域への入退出、廃棄物の処理、被曝管理、放射線関連法規を含め、放射性同位元素を診療に利用する際に医師が知っておくべき事項を教えます。

核医学講座の大学院には今年2名の放射線科専門医が入学しました。現在12名の大学院生が在籍しています(耳鼻咽喉科、精神神経科、整形外科、歯学部放射線科、小児科からの大学院生が各1名)。耳鼻咽喉科医は聴覚信号の脳内処理過程、頭頚部腫瘍、精神科医はアルツハイマー病、軽度認知障害の画像解析、整形外科医は骨軟部腫瘍、関節リュウマチ、運動と筋代謝、歯学部放射線科医は口腔領域悪性腫瘍診断、小児科医はてんかんの画像診断をテーマにそれぞれの分野の臨床研究を行なっています。大学院を修了すると、海外の研究機関に留学しさらに専門性・国際性を高めることになります。これまで、NIMH(今泉)、Cambridge大学(高沢)、アムステルダム自由大学(丸山)、Hammersmith病院(木村)に留学しています。

FDG-PETの普及とともに、CTやMRを中心に診療していた放射線科医が核医学講座の大学院に入学し、PET研究・診療にかかわるようになりました。放射線専門医(診断)はすでに形態診断のエキスパートなので、機能診断の核医学に習熟することによって放射線科と核医学科の垣根がない新しいタイプの診断医が育つものと期待しています。

核医学の進歩には、理工系、薬学系、情報系分野との共同研究が必要です。大阪大学臨床医工学教育研究センターのカリキュラムには「分子イメージング-PET」が組み込まれており、これらの分野の学部生、大学院生、若手研究者にPETの基礎を講義します。講義のあとには、被曝軽減のための標識合成装置へのロボット技術の応用、高エネルギーのサイクロトロンとターゲットによる新しいPET核種の可能性、半導体検出器素材の探索、検出器回路の試作、散乱線補正のアイディアなど、問題解決型の議論がなされます。ハッブル天体望遠鏡でも、散乱線を低減させることによって宇宙の最深部の画像が鮮明に得られるようになったとのこと。講義のあとには、こちらが教育されたような気になります。

医学部には社会人を対象とした講座が開かれています。パーキンソン病講座、糖尿病講座、高血圧講座などで、製薬会社の研究者が多く受講します。大阪大学医学部附属病院には臨床治験センターがあり、新薬の第一相臨床試験を行っています。PET技術の創薬への応用が期待されており、今後克服すべき技術的問題を含めて講義しています。

PET診療

住友重機械工業社製HM-16AVF型サイクロトロン、F-18多目的標識合成装置、アンモニア標識合成装置、O-15水標識合成装置、C-11標識合成装置(ヨウ化メチル、ホスゲン)、島津製Headtome Vを用いてPET診療を行っています。2002年10月から、薬事承認を受けた標識合成装置F-100を導入しFDGによる悪性腫瘍診断、てんかん、虚血性心疾患の保険診療を開始しました。また、O-15標識ガスによる脳循環代謝検査の保険診療を開始した。阪大病院では年間5000例が新たに悪性腫瘍と診断されます。保険診療の対象となるのはそのうちの約半数です。大学病院の性格上、保険診療対象以外の悪性腫瘍も検査を行っています。保険診療3、保険診療外1(骨軟部腫瘍など)の割合です。毎週火曜、木曜がFDG-PETの検査日で一日12〜14例行っています。術前検査、治療効果の評価、治療後の再発診断、年間の検査件数は約1000例です。水曜日は脳・心筋循環代謝検査で年間約200例の検査を行っている。金曜日はC-11標識薬剤による臨床研究(C-11メチオニン、酢酸など)を行います。O-15標識水による患者さんの脳機能臨床研究も金曜日に行われます。正常被験者の脳機能検査は基本的には夜間に行っています。

FDG-PET検査の需要に対応するため、2台のPET-CTが導入されることになりました。また、検査室、待機室などの検査環境の整備、ホットラボの標識合成環境の整備を同時に行う予定にしています。また、放射線科内読影ワークステーションへのデータ転送(放射線科医が自由に画像再構成し読影が可能になる)、院内PACSを通じて主治医への画像配信(SUV計測、重ね合わせ、任意の表示条件、3次元表示などが可能)を行います。PET-CTというモダリティに対するDICOM標準化が行われていないため、様々な工夫が必要でした。主治医に質の高い画像とレポートを届けることが、検査需要を増し診療に貢献する上で鍵になります。

PET臨床研究

PET臨床研究は、患者さんを対象にしたものと健常被験者を対象にしたものに分けられます。保険診療以外は、臨床研究倫理委員会に申請し承認を得て行っています。

患者さんを対象にした臨床研究は、大阪大学で開発された新しい治療法の効果の評価、薬物治療効果の評価が中心です。また、病態が解明されていない疾患について解析が行われています。なお、大阪大学医学部附属病院臨床治験センターと協同し、臨床試験中の創薬候補薬剤の薬理効果を評価する予定です。

  • 脳動脈主幹部閉塞による慢性脳循環障害の脳循環代謝
  • アンギオテンシン関連降圧剤の脳循環への影響
  • WT1ペプチド免疫療法の評価
  • 移植心の機能評価
  • 保険診療以外のFDG悪性腫瘍診断
  • 炎症性疾患のFDG-PET
  • 動脈硬化とFDG-PET
  • 軽度認知障害、アルツハイマー病の画像解析

図1に、転移性消化管間質細胞腫へのイマチニブの効果をFDG-PETで評価した画像を示します。消化管間質細胞腫は、大阪大学北村幸彦教授らによって消化管壁を構成するCajal介在細胞のc-kit遺伝子の機能獲得型点突然変異を原因とすることが解明されました。C-kit遺伝子はレセプターチロシンキナーゼをコードしており、チロシンキナーゼ活性の持続的な亢進ががん化の引き金になります。イマチニブは、チロシンキナーゼ阻害作用によって抗がん作用を発揮します。肝転移巣のFDG集積はイマチニブ投与後消失しました。これまでの抗がん剤はDNA合成と細胞周期に作用する化合物であり、がん細胞以外の増殖の早い細胞(造血細胞、消化管上皮細胞、毛嚢など)はすべて影響(白血球減少、消化器症状、脱毛など)を受けます。これに対して、がん細胞にのみ過剰に発現している機能性分子を標的とする化合物(分子標的抗がん剤)は、これまでの抗がん剤がもっていた増殖細胞一般への作用が少ないために、副作用を抑えることが可能になりました。イマチニブは、慢性白血病の治療薬として保険適用を受けていたが消化管間質細胞腫へも適用が拡大されました。消化管間質細胞腫肝転移巣へのFDG高集積(図1左)は、イマチニブ投与後消失しています(図1右)。

脳機能・代謝研究は以下のことを中心に行なっています。

  • 運動に関する高次脳機能
  • 触覚、聴覚、視覚信号の脳内処理機構
  • 疼痛の脳内処理機構
  • グリア細胞の代謝
  • 脳アミノ酸代謝
  • 乳児期、小児期、青年期の脳機能の発達
  • 尿意と脳機能

高次脳機能を担う大脳連合野の情報処理機構とその成熟過程を中心に研究を行なっています。言語情報は、視覚、聴覚から一次中枢を経て脳に入力され、各々視覚連合野、聴覚連合野で処理されます。一方、触覚から入力された言語は視覚連合野、聴覚連合野双方で処理され、言語の入力系に依存しないレベルの言語処理過程が存在することが示唆されています(図2、上段は、触覚による言葉の入力時、下段は意味のない文字の入力時、Osaki Y, et al. Neuroreport, 2004)。

2006年4月に、浜松医科大学と大阪大学が連携し「こどもの心の発達研究センター」が発足しました。広汎性発達障害、注意欠陥/多動性障害などのこころの発達障害の病因には不明の点が多く、生物学的指標もないことが、教育・療育上の大きな支障となっています。子どものこころのひずみの原因を科学的かつ学際的に探るためには、臨床、分子生物学、神経画像などの面から学際的な研究が求められています。小児の脳血流画像、ブドウ糖代謝画像をもとに、脳機能の成熟過程を画像化する試みが始まっています。

PET基礎研究

PETの基礎研究には、要素技術の開発と実験動物での研究が含まれます。大阪大学大学院医学系研究科医用物理工学講座の井上修教授、村瀬研也教授、東北大学大学院工学研究科の石井慶造教授、国立循環器病センター研究所放射線医学部の飯田秀博部長、大阪大学核物理研究センター土岐博教授と共同研究を行なっています。

1)固体ターゲットによる124Iの生成と標識(核物理研究センター)

核物理研究センターのAVF型サイクロトロンを利用して124Iを生成し、現在SPECTで用いられている123I標識薬剤を124Iで標識し、PETで撮像します。

2)高分解能小動物用PETの試作(東北大学)

「1mm以下の分解能を持つ小動物用半導体PET」

3)薬物動態解析と薬効評価

対向型ポジトロンイメージング装置を用いて、ポジトロン放出核種の全身動態を解析しています。図3に、ラットの全身画像(11C標識フェニトイン)の全身画像を示します。標識医薬品の体内動態を解析しています。マイクロドージングによる薬物動態解析には、マクロドージングとの線形性が前提になっており現在その検証を行なっています。
(PET通信 2006年夏号No. 55 から抜粋)

 

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