|
核医学に関係するカリキュラムは、医学部生、大学院生、研修医、全学共通教育、社会人など、多岐にわたっています。大阪大学医学部では、学部生は3年次の10〜12月の3ヶ月間と4年次の4〜6月の3ヶ月間、基礎講座へ配属され研究室のスタッフや大学院生といっしょに生活します(基礎配属制度)。核医学は臨床講座に属していますが、一方で放射性同位元素は医学研究をする上で欠かすことのできない研究手法でもあるので、基礎講座と同様に基礎配属を受け入れています。各講座2名の定員に対し申し込みはいつも定員を超過し、毎回4〜5名の学生が在籍します。放射性同位元素、放射性医薬品、撮像装置(PETが中心)、データ解析を講義し、最近の総説を読みます。テーマを与え文献検索の仕方を教えます。期間が短いので、すでに蓄積されたデータを解析させ、研究会で発表します。コンピュータの取り扱いに慣れているので、ほとんどがSPM解析に興味を持ちます。学士入学の学生が多いので、中には「ポジトロンレンジの補正をテーマにしたい。」「TOF計測をしたい。」という空恐ろしい学生があらわれたりします。体育会系の学生は、「運動時の筋肉の活動を画像化したい。」といって自ら被験者になったりします。4年次の基礎配属では、仮説を設定し、SPM解析を実際に行ない、結果を抄録にまとめます。国際学会(Brain05)に応募し、2件の研究が採択されました。課題を設定し、データを解析し、論文にまとめるという作業は、研究のまねごととはいえ学生にとって貴重な経験です。現在までに医学部生が行なった核医学研究を以下に紹介します。
-
脳死ファントムによる脳血流評価-FBP法とOSEM法の差について
- アルツハイマー病の脳血流異常-SPM解析
- 下肢運動にともなう筋のブドウ糖代謝
- 健常成人女性の加齢に伴う脳血流変化-SPM解析
- 健常成人における脳ブドウ糖代謝と脳酸素代謝-SPM解析(Brain05最優秀賞 受賞)
- 小児期の脳血流変化-SPM解析
医学部生の核医学の臨床講義は4年次の後半に行なわれます。講義では、放射性医薬品、カメラ、特徴的な画像所見を概説し、詳細は臨床実習で行ないます。管理区域への入退出、廃棄物の処理、被曝管理、放射線関連法規を含め、放射性同位元素を診療に利用する際に医師が知っておくべき事項を教えます。
核医学講座の大学院には今年2名の放射線科専門医が入学しました。現在12名の大学院生が在籍しています(耳鼻咽喉科、精神神経科、整形外科、歯学部放射線科、小児科からの大学院生が各1名)。耳鼻咽喉科医は聴覚信号の脳内処理過程、頭頚部腫瘍、精神科医はアルツハイマー病、軽度認知障害の画像解析、整形外科医は骨軟部腫瘍、関節リュウマチ、運動と筋代謝、歯学部放射線科医は口腔領域悪性腫瘍診断、小児科医はてんかんの画像診断をテーマにそれぞれの分野の臨床研究を行なっています。大学院を修了すると、海外の研究機関に留学しさらに専門性・国際性を高めることになります。これまで、NIMH(今泉)、Cambridge大学(高沢)、アムステルダム自由大学(丸山)、Hammersmith病院(木村)に留学しています。
FDG-PETの普及とともに、CTやMRを中心に診療していた放射線科医が核医学講座の大学院に入学し、PET研究・診療にかかわるようになりました。放射線専門医(診断)はすでに形態診断のエキスパートなので、機能診断の核医学に習熟することによって放射線科と核医学科の垣根がない新しいタイプの診断医が育つものと期待しています。
核医学の進歩には、理工系、薬学系、情報系分野との共同研究が必要です。大阪大学臨床医工学教育研究センターのカリキュラムには「分子イメージング-PET」が組み込まれており、これらの分野の学部生、大学院生、若手研究者にPETの基礎を講義します。講義のあとには、被曝軽減のための標識合成装置へのロボット技術の応用、高エネルギーのサイクロトロンとターゲットによる新しいPET核種の可能性、半導体検出器素材の探索、検出器回路の試作、散乱線補正のアイディアなど、問題解決型の議論がなされます。ハッブル天体望遠鏡でも、散乱線を低減させることによって宇宙の最深部の画像が鮮明に得られるようになったとのこと。講義のあとには、こちらが教育されたような気になります。
医学部には社会人を対象とした講座が開かれています。パーキンソン病講座、糖尿病講座、高血圧講座などで、製薬会社の研究者が多く受講します。大阪大学医学部附属病院には臨床治験センターがあり、新薬の第一相臨床試験を行っています。PET技術の創薬への応用が期待されており、今後克服すべき技術的問題を含めて講義しています。
|