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海外留学記
学会レポート
 
   


10th AOFNMB CONGRESS 2012
Tehran, Iran
May 16-20, 2012

渡辺晋一郎
(大学院博士課程)

AOFNMBはAsia Oceania Federation of Nuclear Medicine and Biologyの略で、4年に1度学術集会が開かれている。2012年はイランのテヘラン市で開催された。
自分は10年前にイランを一人旅したことがあり、イランに行くのは今回が2度目である。「イラン」というと、日本人の多くは「危険な国」というイメージを持っているようであるが、自分の印象としては、イランはイスラムの戒律が比較的厳しいがために概して治安は安定しており、また、旅行者に対して皆親切である。ただし、近年では市内でデモが行われたり、爆弾テロが起きたりしている。さらに最近では核開発問題に関連して制裁を受けており、イスラエルが空爆を検討しているとかいう話が出るなどあるが、街自体は平和そのものであった。治安面で身の危険を感じることはなかったが、交通マナーは概して悪く、交通量の多い道路の横断するのは命懸けであった。しかし、信号機や横断歩道、陸橋がある程度整備されており、10年前に比べれば少し安全になっていた。

学会の会場はMilad Tower Conference Centerというところで、近代的な建物であった。向かいにはMilad Towerというタワーがあり、これは最近できたtelecommunication towerで、世界で6番目の高さを誇っている。敷地に隣接してテヘラン大学医学部やその附属(?)病院があった。これらの建物はなぜか周囲を高速道路に囲まれており、タクシーに乗らないと近づくことも脱出することも不便な場所であった。

演題数は抄録集によれば口演が129、ポスターが107あった。学会の2ヶ月半前まで演題を募集していたので、なかなか演題が集まらなかったのだと思われる。イランを取り巻く政治事情が影響したのだろうか。学会のプログラムが発表されたときには学会まで残り1ヶ月を切っており、あまりの遅さに「このまま学会は中止になるのでは?」と思ったほどだった。学会の出席者、発表者、座長のいずれも明らかにイラン人が多かったが、国内から演題をかき集め、人数を動員したのかもしれない。外国人の参加予定者の中にはイスラエルの空爆の噂のためか、出席を取りやめた人が何人もいるらしかった。2人いるはずの座長が1人しかいないセッションがあったりした。日本からの参加者は4人だけだったが、事務局が言うには、10人以上が参加してくれるはずだったのだという。また、ポスター会場では、ポスターが貼ってあるのは半数もなかった(なぜかイラン国内からの参加者でも)。それでも、イラン核医学会が一丸となって、この学会を成功させようと一生懸命になっている様子を感じることは多々あった。

口演の演題は脳、心臓、腫瘍、内用療法、放射線防護、薬理、分子イメージング等いろいろな分野にわたっていた。自分が聴いた演題では、68Ga標識のaerosolやMAAでも99mTc標識のものと同等の肺換気血流イメージが得られるとか(99Moが供給不安定になった際に代替として利用できる)、90Yのmicrosphereを用いたradioembolizationの治療成績とか、NaFとFDGや99mTc-MDPとの比較、18F-Cholineによる前立腺癌のstaging、FDGによる骨転移の検索、FDG-PETを利用した放射線治療計画の立案、PET-MRIの話題などがあった。目新しい内容や最新の研究発表もあったが、イランや世界における核医学の現状報告的な演題や文献のreview等も多かった。

自分の発表は2日目午前にあり、高齢双生児の全身FDG-PETについて発表してきた。時間通りに会場へ行くと、中に誰もいなかったので焦った。だいたい何事も定刻よりも遅れて始まるようだった。演題に対する質問は、発表が終わるごとにではなく、そのセッションの発表がすべて終わった後にまとめてQ&Aの時間を設ける形式であった。自分の演題を含めてどの演題に対しても質問が出なかったので、拍子抜けした。(対策を練っていたのに。) 同じセッションの他の演題は、腎動態シンチの話題やIVRの話題などで、聴衆や発表者がそれぞれ専門性の異なる者同士だったためかもしれない。他のセッション、例えば脳核医学のセッションなどでは、その分野の専門家同士の間で比較的活発な議論が行われていた。

ところで、イラン人参加者の中に女医さんが多いのには驚いた。10年前にイランに来たときも既に女性の社会進出は盛んだと聞いてはいたが、女性の割り合いは日本におけるのと同じくらい多いと思われた。イランでは女性は身体の線を隠す服装をするよう規定され、バスの車内で男性は前、女性は後ろのほうに座るなどの区別があったりするが、尋ねてみたところ、女性も男性と給与面など平等であり、女性の社会進出を妨げるものは何もないとのことであった。

学会4日目の夕方に「YAS Nuclear Medicine Center」という施設を見学させてもらった。これは、学会の外国人参加者のために宿泊等の手配を行っていた現地の旅行会社に、日本人の方がいて、娘さんはテヘラン大学で核医学で学位を取得、そのお婿さん(イラン人)も核医学の医師で、友人と2人でクリニックを運営している、と聞いたので、病院見学が可能かどうか打診したものである。イランの医師は、午前中は勤務医として病院で診療に当たり、午後は各自のクリニックで患者を診る、というパターンが多いので、クリニックを開業していること自体は普通のことである。大学病院の見学は無理だったが、プライベートなクリニックは見学させてもらえた。これには防衛医大の小須田先生と御一緒した。この「YAS Nuclear Medicine Center」は核医学検査専門の検査施設で、1検出器型のSPECT装置が1台あるだけだったが、近隣の医療機関からの依頼を受けて心筋シンチや骨シンチ、センチネルリンパ節シンチ(イランでも乳癌は多いらしい)、腎動態シンチ等を数多く行い、繁盛しているようだった。装置は旧型でもコンソールや解析環境、最終的に出力される画像は日本のものと大差ないように感じた。検査室の他にRI準備室や運動負荷室などひと通り見せてもらった。薬剤や標識キットは国産だと聞かされた。なお、検査レポートは英語で記載する。このような核医学検査を専門に行う施設は、イラン国内に200施設ほどあるらしく、うち約100施設はテヘラン市内に、そのうちの約40施設はこのようなプライベートな施設だという。PETセンターというものはまだ無いらしかった。日本では検診目的にPET検査を受ける人がいることについてはとても驚き不思議がっていた。

国際○○へ行くと毎回思うのだが、今回も英会話修練の必要性を感じた。英語を母国語としない者同士の英語は聞き取りやすいかと思いきや、そうでもなかった。自分が聴いたイラン人の発表者は、流暢に、かなりの早口で英語を話し、しかも時間オーバーが多く、発表したいことは山のようにあると言わんばかりであった。
イランの医師たちは熱心で、勢いがよく、論文等もよく調べて勉強しているようであり、そのイメージは発展が著しいテヘラン市街と重なり、躍動するものを感じた。うかうかしてはいられない。

 

 

美しい広場

Milad Tower

Milad Tower Conference Center

学会会場のロビーの風景

テレビ局の取材があり、この後自分がインタビューされた。

学会会場のMain Hall. 定刻のはずだが、人が少ない。

 

 

YAS Nuclear Centerの検査室

YAS Nuclear Centerで記念撮影

   
 
 

 

 

       
       
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