大阪大学大学院医学系研究科 核医学講座 / 大阪大学医学部附属病院 核医学診療科・放射線部 Department of Nuclear Medicine and Tracer Kinetics, Osaka University Graduate School of Medicine
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研究内容(基礎研究)
画像解析法の開発

近年、生体イメージング技術の進歩によって、生体の形態、機能に関するさまざまな対象の可視化が発達している。特に核医学技術に基づいたPET、SPECTなどによる生体機能の可視化は、アルツハイマー病などの認知症診断、脳血流、脳酸素代謝の評価、悪性腫瘍の検索などの臨床診断技術に応用され、その有用性は年々高まり、応用範囲は急速に広がりつつある。この画像診断技術に関する重要な問題の一つは、空間分解能が低いために画像診断の精度が十分に上がらないことである。撮像装置の性能向上は当然重要ではあるが、物理的限界、コスト的な問題などが大きな障害となる。この問題は特に、低空間分解能に起因する部分容積効果と呼ばれるノイズが画像信号に加わることによって生ずることが知られている。部分容積効果は対象物が小さいほどその程度が大きい。例えば脳のPET、SPECTに関しては、投与されたトレーサ薬剤が大脳皮質など非常に小さく、薄い部位に集積するため、部分容積効果によって対象部位の信号強度は著しく修飾され、その結果信号強度を手がかりとした臨床画像診断の精度は低下する。脳は疾患、加齢変化などにより容積が変化するため、部分容積効果の程度は個体差をもって変化し、これがさらに正確な画像診断を困難なものにする。

近年SPECT、PETの統計画像解析が臨床画像診断において極めて有用であることが認識されてきているが、同時にこれが部分容積効果の影響を非常に受けやすいことも周知の事実となっている。部分容積効果に影響されないSPECT、PETの統計画像解析法を開発することが切望される。また、I-123 iomazenil SPECTによって近年脳主幹動脈狭窄症例に対して脳のviabilityを評価しようとする試みが行われているが、画像が虚血脳領域の萎縮による部分容積効果を伴うため現在のところ良好な結果は得られていない。これを補正することによって脳虚血リスクの新たな指標を得ることが望まれる。また、脳のみならずF-18 FDGによる全身の腫瘍PETイメージングにおいても、特に10mm以下の小病変に関しては部分容積効果を受け、集積の程度を過小評価するために診断精度が低下すると考えられている。これに関して臨床的に有用な補正法の開発が待たれる。また大阪大学では新たに導入された動物用PET、PET/MRI装置を用いて、ラット等の脳領野におけるトレーサ集積の評価を定量する試みが始まっているが、ヒトよりも微小な動物の脳においてはPET画像の部分容積効果の影響はさらに大きい。In vivoにおけるトレーサ研究を精度良く行うためにも、部分容積効果の補正は必須であると考えられる。我々は、特に簡便性、頑健性に優れた脳SPECTの部分容積効果補正法を用い、唯一他に先がけて臨床画像診断での有用性を示すことに成功している。

図1
I-123 Iomazenil SPECTによるてんかん発作焦点診断における精度改善のための試み

中枢性ベンゾジアゼピン受容体に結合するSPECT用トレーサであるI-123 iomazenilは、てんかん焦点においてその集積が局所的に低下することが知られており、近年外科的治療の対象となる難治性てんかん患者に対する焦点検索の目的で臨床的に多く用いられるようになってきている。しかし、中枢性ベンゾジアゼピン受容体が大脳皮質灰白質に局在することから、I-123 iomazenilの集積分布は大脳皮質灰白質の萎縮、生理的な灰白質密度の左右差等による形態的な変化の影響を強く受け焦点検索能力が低下する。このことによって当薬剤の臨床診断能が十分に発揮されていない可能性があると考えられる。我々はI-123 iomazenil SPECT画像を大脳灰白質分布に基づいて部分容積効果補正をすることにより、難治性てんかん患者における発作焦点の検索能力の改善が得られるかどうかを検討した。

MRI上粗大な異常所見を認めない難治性てんかん患者で、焦点切除術を施行され、術後の予後や切除標本の組織病理学的所見より切除部位が発作焦点であると確認できた患者を対象とし、術前のI-123 iomazenil SPECT画像を術前のMRI画像のsegmentationによって得た大脳灰白質分布画像に重ね合わせ、pixel単位で部分容積効果の補正を行った。補正前後の画像に対し、発作焦点の視覚的診断およびSPECTカウントの左右比(asymmetry index: AI)に基づく定量的評価を行った結果、診断の精度、感度、特異度は補正によって改善することが示された。また切除部位におけるAIに関しては、補正後の平均AI(22%)は補正前の平均AI(16%)より有意に大きく(p = 0.006)、さらに補正前の画像診断にて指摘された偽陽性部位では、補正前の平均AI(12.1%)に対して補正後の平均AI(4.8%)が有意に低値であった(p < 0.001)。I-123 iomazenil SPECT画像を大脳灰白質分布に基づいて部分容積効果補正することによって、難治性てんかん症例における発作焦点の検索能力が改善することが明らかになった。現在、他施設との共同研究として、さらに患者を拡大し、観察期間を長くした検証研究を施行中であり、近いうちに結果を発表する予定である。

図1
部分容積効果補正により病巣(赤矢印)が明確に描出される。
文献
  1. Kato, H., Shimosegawa, E., Oku, N., Kitagawa, K., Kishima, H., Saitoh, Y., Kato, A., Yoshimine, T., Hatazawa, J., 2008. MRI-based correction for partial-volume effect improves detectability of intractable epileptogenic foci on 123I-iomazeni l brain SPECT images. J Nucl Med 49, 383-389.
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