大阪大学大学院医学系研究科 核医学講座 / 大阪大学医学部附属病院 核医学診療科・放射線部 Department of Nuclear Medicine and Tracer Kinetics, Osaka University Graduate School of Medicine
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研究内容(臨床研究)
神経科学
神経系の機能的成熟と可塑性について

PETは、生体のブドウ糖代謝、酸素代謝、アミノ酸代謝、核酸代謝などの基本的な生化学・機能情報を画像化することができる。中枢神経系では、局所脳機能が脳血流・エネルギー代謝と平行して変化することが明らかにされ、脳血流量やエネルギー代謝は脳機能を示す重要な指標として研究されている。神経細胞の興奮にともないその領域の血流量が増加することから、様々な生理的刺激を行い、その時の脳血流と安静時の脳血流を比較して血流増加部位を探し出し、脳機能の局在を同定する手法が開発された。このような手法を用いて、神経系の機能的成熟と可塑性について研究している。

1)胎生期の脳機能の局在化

ヒト胎児の脳血流・代謝を直接画像化することはできないが、胎生期に生じた異常を生後観察することは可能である。異所性灰白質は、胎生期神経細胞の遊走(脳室周囲germinal matrixからradial gliaに沿って脳表まで)の障害により形成される。PETによる脳機能賦活検査では、一次運動野直下の異所性灰白質は、対側の手指運動と関連して血流が上昇していた1)。これは、遊走途中の神経細胞がすでに運動に関連する機能を有していることを示している。胎生期のヒト脳の発達過程で、どの時期に脳局所に固有な機能が生じるのかまだ全容は解明されていない。異所性灰白質のPET脳賦活検査は、大脳皮質のカラム構造が形成される前に神経細胞が固有の機能を有している可能性を示唆している(図1)。

図1
図1
2)盲聾唖者における視覚連合野、聴覚連合野

39才の言語習得後の盲聾者に指文字をトレーニングし、充分習得後にPET検査を行った。右手に指文字提示中、視覚連合野、聴覚連合野、運動性言語野が賦活された(図2)2), 3)。これは言語情報が感覚野を介して、これらの言語関連領域に伝達され、処理されていることを示している。一次中枢を経由しない信号であっても各連合野の言語関連処理機構が機能している。正常に形成された聴覚言語中枢は、触覚刺激による信号を処理することが可能である。習熟には〜1年を要する。

図2
図2
3)脳機能の可塑性

小児の脳血管障害では、成人と比較して機能回復が良好であることが知られている。左中大脳動脈閉塞の10才女児の発症後1ヶ月(完全失語、右完全片麻痺)の18F-fluoro-deoxy-glucose PETでは、運動性言語中枢の代謝の低下が著しい。3年の経過で、軽度の構音障害を後遺するのみにまで回復した。この時のPETでは、右下前頭回の糖代謝が亢進しており機能回復に関連していることが推定される。右大脳半球の対称部位が代償性に機能していると考えられる(図3)。

図3
図3

中枢神経系には固有の機能を有する数多くの神経伝達系が存在する。PETを用いて、特定の神経伝達系に親和性のある薬剤を標識し、シナプスにおける神経伝達の過程(節前神経、シナプス内、節後神経での神経伝達物質の合成、分解、受容体結合、再吸収)を画像化することが可能となった。今後、脳局所の機能分化だけではなく、個々の神経伝達系の機能が統合調和され、神経機能が発現するプロセスをPETを用いて解明する。

文献
  1. Hatazawa J, et al. :Regional cerebral blood flow response in grey matter heterotopia during finger tapping: an activation study with positron emission tomography. AJNR Am J Neuroradiol 17:479-482, 1996
  2. Osaki Y, Doi K, Takasawa M, Noda K, Nishimura H, Ihara A, Iwaki T,Imaizumi M, Yoshikawa T, Oku N, Hatazawa J, Kubo T. Cortical processing of tactile language in a deaf-blind subject. NeuroReport 2004; 15:287-29
  3. Osaki Y, Takasawa M, Doi K, Nishimura H, Iwaki T, Imaizumi M, Oku N, Hatazawa J, Kubo T. Auditory and tactile processing in a postmeningitic deaf-blind patient with a cochlear implant. Neurology. 67:887-890, 2006
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