どんな人でも毎日眠ります。我々は人生の約1/3を睡眠に当てていますが、子どもでは大人よりさらに長く深い睡眠が必要なことは古くからよく知られていることです。ところが、近年、生活習慣が多様化し、子どもの睡眠時間が昔に比べ大幅に減っています。大人の閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、居眠り運転事故や、メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)につながることがマスコミで取り上げられています。小児においては、睡眠不足はホルモン分泌や神経の発達に影響を与え、日中の集中力が低下するなど、行動にも影響を与えることがわかってきました。子どもさんが十分な睡眠がとれているか、閉塞性睡眠時無呼吸などの睡眠の問題を抱えていないかを知ることが大切です。

 大阪大学医学部附属病院小児科では睡眠外来を開設しております。睡眠の検査、特に終夜ポリグラフと呼ばれる精密検査は、専門的な知識、経験やマンパワーが必要ですので、子どもの睡眠検査や治療ができる病院は非常に限られています。また、非常に大切なことは、睡眠に問題を抱える小児を診察した場合に、必ず、その子が正常に発達しているか、健やかに発育しているかをチェックすることです。また、重い睡眠の問題を持つお子さんには、骨や筋肉の病気などが隠れている可能性があるため、必ず、小児科医が中心となってこれらのお子さんを診療する必要があります。小児神経、小児内分泌、発達障害、神経代謝、骨系統疾患などの専門外来のバックアップの下で、睡眠医療のトレーニングを受けた小児科医が診療していることが、当科の睡眠外来の特記すべき特徴であり、このような体制の病院は日本で唯一だと言っても過言ではないでしょう。
 当科では、耳鼻咽喉科、歯学部との連携のもと、睡眠を総合的に診療していきます。

 

(1)「子どものいびきが気になります」
 お子さんのいびきの全てが異常というわけではありませんが、毎日いびきをかく、いびきが激しい、眠っているときに苦しそうにすることがある、息が止まっていることがある、というようなことがあるようでしたら、閉塞性睡眠時無呼吸症候群という病気の可能性があります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は決してまれな病気ではなく、子どもさんのうち、3%はこの病気である、とも言われています。睡眠時に呼吸障害がある子どもさんでは、息が苦しくて十分熟睡できないため、眠っている間に分泌される成長ホルモンが十分分泌できず、身長が伸び悩んだり、夜尿の原因になったりします。また、近年の研究で、昼間の注意力不足や多動を引き起すことも知られて来ています。
 どうして、子どもに閉塞性睡眠時無呼吸症候群がおこるのでしょうか? 一番多い原因は扁桃腺やアデノイドが大きくなって空気の通り道を狭くしていることです。この場合、耳鼻科で大きな扁桃腺やアデノイドを取る手術をしていただくと、劇的に症状はよくなります。その他に、顎の小さい子ども、筋肉疾患の子ども、骨の病気の子ども、重症心身障害児などもこの病気にかかりやすいことが知られています。当科では終夜ポリグラフを始めとして色んな検査によって、原因診断、重症度診断と治療を行います。耳鼻科の手術では完全によくならない難しい患者さんには、CPAPという治療をいたします。この治療も50人を超えるお子さんにしております。

 「日中とくに眠そうじゃないから・・・」という場合→重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群のお子さんでも意外と昼間は眠気を自覚しない傾向にあります。アメリカのガイドラインでは、いびきが連日ある子どもさんに対しては、睡眠の精密検査をして呼吸の異常がないか調べるべきであるとしております。

(2)昼間にすぐ眠ってしまう
 昼間に眠気が強い原因の一番は、単なる睡眠不足です。特に長い睡眠時間を必要とする思春期の子どもは、逆に深夜までネットサーフィンをしたり、テレビを見たり、受験勉強が忙しかったりと慢性的な寝不足状態です。
 当科では、普段の睡眠習慣を問診と睡眠覚醒表により、検討いたします。

 勿論単なる睡眠不足以外による昼間の眠気もあります。例えば、ナルコレプシーという病気は大人の病気だと思われていますが、実は小さい子どもでも発症することがだんだんわかってきました。当科では、終夜ポリグラフや昼間の脳波、髄液・血液等の検査にて診断いたします。

(3)「寝かそうとしてから実際に眠るまで、すごく機嫌が悪くなる、時間がかかる」
 レストレスレッグス症候群という病気があります。これは布団に入ったら、足や手にむずむず、ちくちく等多様な異常な感覚があって眠れない、動くと楽になる、夜になるとひどくなる、じっとしていてもひどくなるというもので、日本の子どもではほとんど報告がなかったのですが、当科では既に5名以上の患者さんを診断して治療しております。
 また、重度の不眠や昼夜逆転を訴えるお子さんの中には、広汎性発達障害やうつ病等の精神科疾患が隠れている場合もあります。この場合には精神科にご紹介することもあります。

●診察の流れ

1. 睡眠アンケート、睡眠リズム表
睡眠に問題があると疑われる場合、まず、どのような環境でどのように睡眠をとれているかのチェックが必要です。当科受診された場合はまず、睡眠アンケートを記入していただき、睡眠リズム表を少なくとも2週間つけていただきます。
2. 問診 
家庭でどんなことが気になるのか、心配な点を詳しく伺います。
3. 診察
扁桃腺や、骨格、胸郭等全身を診察いたします。成長曲線を作製します。
4. 検査
診察で必要と思われた以下の検査を組み合わせて調べていきます。

・パルスオキシメトリ検査
夜中の無呼吸、もしくは低換気が疑われる患者さんには手足の指で血中酸素濃度や脈拍数を調べる器械を貸し出しいたします。終夜ポリグラフを施行する前に、外来で、病気の重さを推し量ることができます。

・頭蓋骨レントゲン撮影
あごが小さい、のどの奥がせまくなっている、などの、無呼吸を起こしやすい状況なのかをレントゲンで確認します。

・血液検査、頭部画像検査
その他、ホルモン異常が疑われる場合、その他の病気が疑われる場合には血液検査をします。

・終夜ポリグラフとは?
パルスオキシメトリにはっきりとした異常がないからといって、閉塞性睡眠時無呼吸症候群がないとは言えません。最終診断のためには終夜ポリグラフが必要です。その他、睡眠の質がわるいと予想される場合、レストレスレッグス症候群やナルコレプシーが疑われる時には、この検査をいたします。最低一泊二日の入院が必要です。脳波、呼吸、筋電図など、たくさんのモニターをつけて、睡眠の深さ、呼吸状態、筋活動などを一晩記録し、睡眠を総合的に診断します、たくさんのセンサーを装着しますが、痛みはありません。ただし、小さいお子さんでは自分でセンサーを外してしまうことがあるため、検査に制限が生じる場合があります。

睡眠外来初診は、第2・4月曜午前(予約診療)です。
できるだけ、かかりつけのお医者様に紹介状を書いてもらい、福祉医療ネットワーク部を通じて予約をとってご来院下さい。