准教授 : 酒井規夫
大学院生 : 大友孝信
大学院生 : 濱田悠介
大学院生 : Hossain Mohammad Arif
研究生 : 赤木幹弘



 当グループは先天性代謝疾患の中でも大きな疾患群であり、近年遺伝的解明、治療法の開発の進んでいる「リソソーム蓄積症」を主たる対象疾患として、生化学的手法、分子生物学的手法を用いて病態解明、治療法開発を含む先進医療を行いながら、患者さんのさまざまなニーズに応えるべく専門診療を行って来た。現在は、リソソーム蓄積症に対する酵素補充療法、造血幹細胞移植術に関して全国的にも積極的に取り組んでおり、これに加えて小児科領域における先天異常疾患や多様な遺伝疾患の家族に対する遺伝カウンセリングを中心とした臨床遺伝的アプローチを行っている。

  1) 我々は先天性脱髄疾患の一つであるクラッベ病(グロボイド細胞ロイコジストロフィー)の原因遺伝子であるガラクトセレブロシダーゼを世界に先駆けてクローニングし,本疾患のモデルマウスであるtwitcherにおいてガラクトセレブロシダーゼ遺伝子の突然変異を同定した。また日本人のクラッベ病の患者における遺伝子異常について広く解析しており、その変異の頻度分布、臨床病型の関係などについての知見を発表して来た。今後も本疾患の病態や治療法に関する研究を継続してゆく予定である。

2) 代謝疾患の分子生物学的解明は当グループの大きな柱であり、今までにもクラッベ病以外に、フコシドーシス、GM1ガングリオシドーシス、ミトコンドリア病、レット症候群、サラ病、ペリツェウスーメルツバッハー病、アレキサンダー病など多くの遺伝疾患の遺伝子解析を行って来た。最近は日本人に多いI-cell病の原因遺伝子が2005年に解明されたため、全国の施設と協力し日本人における遺伝子変異を2009年に報告した。その後、細胞レベルでの詳細な病態解明を行い、治療法の開発を目指した研究を続けている。

3) 先天異常としてさまざまな形態異常が知られているが、発生学の近年の急激な進歩により多くの知見が得られているにもかかわらず、ヒトにおける形態異常の遺伝的な原因、環境因子に関する具体的な情報や予防に関する知見は少ない。我々はいくつかのモデルマウスを用いて、この遺伝因子と催奇形性因子との相互作用を研究している。
  1) リソソーム病、糖原病、ウィルソン病などの先天性代謝疾患の診断・治療を行ってきた。また筋疾患、脳変性疾患、先天異常一般において、その病理学的解析に加えゲノム情報を基にした遺伝子解析による診断を目指している。代謝疾患に対する治療として、当グループでは血液腫瘍グループの協力の元に現在までに種々の先天性代謝疾患20例に対して骨髄移植を行っている。最近では骨髄バンク、臍帯血バンクを用いた移植が増加しており、疾患の神経予後の評価法の確立や前処置などの移植方法の改善に関しても検討を続けている。また、欠損酵素の酵素補充療法が始まっており、ゴーシェ病(3例)、ファブリー病(22例)、ハーラー病(1例)、ポンペ病(5例)、ハンター病(5例)の5疾患に対して治療中である。

2) また遺伝疾患一般に対する遺伝カウンセリングを遺伝子診療部門において行っている。疾患の確定診断以外に保因者診断、羊水細胞を用いた出生前診断も行っており、産婦人科と協力体制を組んでおり、その実施においては倫理的な面での検討を遺伝子診療部の症例カンファレンスで行っている。
   初期研修においても、先天代謝異常症はマススクリーニングの主な対症疾患であるため、その診断、治療の方法を見てもらうことが可能であり、その他の遺伝疾患に関しても最近の遺伝子診断などの進歩や、先進的な治療の実態を感じてもらうことができる数少ない施設のひとつである。
初期研修後の専門的研修においては、代謝疾患の診断、治療の要領を習得し、酵素診断、遺伝子診断の意義などについて十分な理解を進め、また臨床遺伝的な概念の習得が可能であり、臨床遺伝専門医の専門研修が可能である。