寄附講座

炎症性腸疾患治療学

炎症性腸疾患の治癒を目指して~内科治療・外科治療の最適化と病因の究明~
  • 低侵襲外科治療開発
  • 周術期内科治療による外科治療成績の向上
  • 炎症性腸疾患関連発癌のメカニズム解明と早期診断法の確立
  • 病因と腸管免疫細胞および腸内細菌叢との関連
  • 脂肪由来幹細胞を用いた再生医療

内科,外科,基礎の3方向から炎症性腸疾患にアプローチする

炎症性腸疾患治療学寄附講座は、2015年1月の開講以降、消化器内科学、消化器外科学、免疫制御学教室と連携して研究を進めています。炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Diseases: IBD)は消化管に原因不明の炎症をおこす慢性疾患の総称で、潰瘍性大腸炎、クローン病の2疾患からなります。日本では、IBDは欧米に比し比較的頻度が低いとされていました。しかし、最近では日本での患者数も増加し、欧米に近づきつつあります。当研究室はIBD研究に加えて、診療体制の強化にも力を入れてきました。

潰瘍性大腸炎、クローン病ともに若年者に発症することが多く長期にわたって治療が必要となるため、Quality of Life(QOL)を低下させるだけでなく就学、就労や結婚、出産など社会活動の妨げとなります。以前は有効な内科治療も乏しく、状態が悪化して仕方なく手術になるケースも少なくありませんでした。また、患者さんは術後も様々な制限のもと、治療を続けておられました。しかし、2000年代に入り、腸管免疫の異常という疾患メカニズムに基づく画期的な新規治療法が登場し、患者さんのQOLが向上するとともに内科治療、外科治療ともに大きく見直されるようになってきています。IBD患者のQOL、社会活動性、予後を改善するためには、様々な内科的治療、外科的治療を適切に組み合わせた治療戦略を構築することが必要であり、さらに疾患のメカニズムに基づく新たな治療法の開発や再生医療の応用が期待されています。内科、外科、基礎が高いレベルで診療、研究を行っているという大阪大学の特徴を活かし、全国、世界に発信できるIBD診療、研究を目指しています。

図 炎症性腸腸疾患に対する低侵襲手術