共同研究講座

先端ゲノム医療学

先端ゲノム医療の開発と臨床実装 ~生殖医療の観点から~
  • 胚の染色体異数性評価を目的とする着床前診断(PGT-A)臨床研究の実施
  • 次世代シーケンサーを用いた流死産絨毛・胎児組織染色体検査(POC-NGS)臨床研究の実施
  • 胚の染色体異数性評価を目的とする非侵襲的着床前診断(ni-PGT-A)研究の実施
  • クリニカルシーケンスの社会実装のための技術開発
  • クリニカルシークエンス技術を生殖医療分野に応用した新規検査方法の開発及び評価

最新のゲノム科学の知見を生殖医療の臨床現場に活かすための研究を展開

2000年以降のゲノム科学の進歩は目覚ましいものがあります。特に次世代シーケンサー(next generation sequencing :NGS)が登場してからは、様々な疾患の染色体・遺伝子異常が次々と明らかにされてきました。治療を始める前に遺伝子などを検査して患者さんの体質や病気の特徴にあった治療を行うことを個別化医療と呼びますが、近年、クリニカルシーケンス(患者さんのゲノム情報や疾患関連遺伝子をNGSを用いて網羅的に解析し、検出された遺伝子変化の結果を最新の臨床エビデンスと照らし合わせることで、疾患の診断や治療方針選択の補助とする新しい検査)の発展とともに実現可能となってきています。

妊娠成立から出産の過程においては、受精卵や妊娠組織の染色体・遺伝子が重要と考えられ、様々な検査が実施されます。例えば、生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)を用いた不妊治療で、子宮内に移植する受精卵(胚)の全染色体の異数性を胚移植前に調べる着床前診断(preimplantation genetic testing for aneuploidy: PGT-A)や、NGSを用いた流死産の原因検索目的に実施する流死産絨毛・胎児組織染色体検査(testing of the product of conception using NGS:POC-NGS)などがあります。大阪大学では、上記検査の有益性を検証するために臨床研究を実施しています。また、PGT-Aの際に稀に発生する胚損傷のリスクを回避する目的として、胚生検を実施せずに、胚に付随する検体を解析する非侵襲的着床前診断(Non-invasive preimplantation genetic testing: niPGT)の研究、流産の原因を非侵襲的に診断する方法の開発や、不妊症・不育症の関連遺伝子の探索も次世代シーケンサーを用いて実施しています。このような検査は、患者さん一人一人の妊孕性にあわせた治療を選択する際の判断材料となり、個別化医療につながると考えております。

本研究の成果により、ゲノム情報を応用した治療による妊娠率の向上が期待されます。特に少子高齢化社会において、挙児希望のあるカップルが妊娠・出産できることは重要なテーマと考えており、我々の開発した検査等が次世代の社会の基盤となることを願っています。