日常診療データを用いた臨床試験の外部対照群に関する検討
1.研究の対象
2010年1月から2023年12月までに大阪大学医学部附属病院に急性脳卒中で入院された方。
2.研究目的・方法
新薬候補化合物の臨床評価(有効性/安全性)にはプラセボ対照を用いたランダム化比較試験を実施することが標準的なアプローチですが、該当する患者様が少数の場合や倫理的観点からランダム化比較試験の実施が困難なことがあります。急性脳卒中治療薬の開発では、意識障害や失語等の影響により患者様よりランダム化比較試験の参加のご意思を確認できないことがあり新薬開発が進まない要因の1つになっています。がん治療薬の開発分野では、過去の臨床試験データや診療記録データベースから抽出した外部対照群を設定し試験が行われることがありますが、急性脳卒中治療薬の開発分野ではこのような検討が進んでいません。本研究の目的は、日常診療データ(医療情報データベース)を用いて既存の治験・臨床試験における外部対照群を疑似的に作成することを通じて、現時点の日常診療記録の有用性と限界を明らかにすることです。改善点が明らかになれば日常診療記録の記述を工夫することで医薬品臨床開発に活用できるデータが得られるようになり、新薬候補化合物の臨床評価のスピードアップにつながり、新しいお薬が患者様のもとにいち早く届くことに繫がると期待できます。
研究方法は、臨床研究等提出・公開システム(jRCT)(https://jrct.niph.go.jp/)や 臨床試験情報登録センター(UMINCTR)(https://www.umin.ac.jp/ctr/index-j.htm)に登録されている急性脳卒中治療薬の臨床試験における項目定義に従い医療情報データベースから情報収集し、データ項目ごとの抽出割合や患者背景・治療内容・予後について平均値や割合等の記述統計量を算出し既存試験の文献情報との比較などを行います。
3.研究に用いる試料・情報の種類
- 患者基本情報
(入院年月日、診断名、重症度、生年月日、年齢、性別、身長、体重、既往歴、併存症、内服薬、生活歴、家族歴、血液検査など) - 病態や重症度等に係る項目
(病型、mRSスコア、NIHSSスコア、JCSスコア、WFNS分類など) - 検査・治療内容等
(頭部CT、頭頚部MRI、頸動脈エコー、心エコー、カテーテル血管造影、血液検査、尿検査、急性期治療内容、急性期リハビリテーション内容など) - 退院時の状況
(重症度、退院時処方内容、退院後の経過など)
4.利益相反について
研究を行うときにその研究を行う組織あるいは個人(以下「研究者」という。)が特定の企業から研究費・資金などの提供を受けていると、その企業に有利となるように研究者が研究結果を改ざんあるいは解釈したり、また都合の悪い研究結果を無視するのではないかという疑いが生じます。(こうした状態を「利益相反」といいます。)
この研究における利益相反は、大阪大学大学院医学系研究科・医学部臨床研究利益相反審査委員会による審査を受け、承認を得ています。我々はその審査結果に基づき、利益相反を適正に管理して研究を行います。
5.研究実施予定期間
研究機関の長の実施許可日〜2027年3月31日
6.お問い合わせ先
研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。ご希望があれば、個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲で研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。また、いつでも本研究への協力を拒否することができます。研究への協力を断っても診療に関する不利益等を受けることはありません。
研究に関するご質問等の連絡先:
大阪大学大学院医学系研究科 医療データ科学共同研究講座 笹原祐介
吹田市山田丘2-2
TEL: 06-6210-8257
研究責任者:
大阪大学大学院医学系研究科 医療データ科学共同研究講座特任教授 飛田英祐