4大阪大学医学部附属病院病院長野々村 祝夫NONOMURA Norio大阪大学大学院医学系研究科附属最先端医療イノベーションセンター長藤本 学 FUJIMOTO Manabu最先端医療イノーベーションセンター(The Center of Medical Innovation and Translational Research 以下CoMIT)が本学に設置されてちょうど10年になります。本センターは医学研究を臨床研究、さらに医療への実用化をめざす研究拠点として設置されたものです。大阪という街は商業の街、商人の街として昔から栄え、何事も「人の役に立つ」ことを大切にしてきました。医学研究においても、その精神は残っていると思います。大阪大学医学部では人の役に立つ研究を行うことをモットーに日々多くの研究者がライフサイエンス分野の研究に励んでいます。医学研究が医療現場において実用化に至るまでは非常に長い道のりがあります。「医療の現場で何が問題となっているのか」、「その原因は何か」、という疑問から、原因物質(タンパクや遺伝子)を同定して、診断法や治療薬を開発するとこまで至って初めて「人の役に立つ」わけです。また、医工連携によって新たなデバイスを開発することで、より精緻で安全な医療が出来るようになる事も有ります。こういったことがスムーズに行えるように、大阪大学医学部附属病院には2002年に未来医療センターが設置され、基礎研究と臨床の橋渡しを行ってきました。その後、同センターは「未来医療開発部」に改組され、橋渡し研究だけにとどまらず、臨床研究を全体的に推進する機関となっています。こうした取り組みは高く評価され、2015年には医療法上の「臨床研究中核病院」に認定されました。これらの取り組みをさらに加速させるためには産学連携が重要です。CoMITはそのような目的で設立され、組織的には研究開発部門、共通基盤部門、研究支援部門から成り立っています。研究開発部門は本センターの中心となる部門で、免疫創薬ユニット、再生ユニット、免疫再生融合ユニット、新融合領域ユニットによる産学官連携プロジェクトが進行しています。それぞれのユニットには産学連携の共同研究講座や寄附講座が入っており、すばらしい研究が進められています。阪大病院は、このCoMITで開発されたシーズがfirst in humanを経て実装化に至るまでを全面的にサポートして行きたいと思います。大阪発の最新医療を目指して産学官連携の融合研究拠点として大阪大学医学系研究科では、2002年に大阪大学附属病院に未来医療センターを設置し、我が国でいち早く、学内外の基礎研究のシーズを先端医療の開発に発展させる体制を整備してきました。次の行うべき改革として考えられたのが、有望なシーズが次々と芽生える土壌の形成であり、その実現のカギとして、産学連携の強化を目的とした最先端医療イノベーションセンター構想が打ち出されました。本構想を具体化していく過程で、経済産業省の補助事業である先端技術実証・評価設備整備費等補助金(「技術の橋渡し」拠点整備事業)に幸いにして採択され、3代にわたる医学系研究科長のリーダーシップと大勢の教職員の努力の結晶として、2014年4月に最先端医療イノベーションセンターが開設されました。本センターは、企業・大学・異分野領域の研究者が同じ施設内の�Under One Roof�に集まり免疫や再生をはじめとする融合的・横断的な最先端医療の開発と実用化を目指すという非常にユニークな特徴を持っています。実際に、本センターで進められているプロジェクトや企業数も年々増加しており、ますます充実した内容となって、多くの成果を発信しています。本センターが今後も基礎研究から臨床研究、社会実装までの橋渡しを推進する役割を担い、さまざまな融合による新たなイノベーションを創発する拠点になることを願っております。
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