創刊にあたって

 

 2001年4月から大阪大学大学院医学系研究科に開設された医の倫理学教室では、スタートからほぼ半年が経過して、ようやく研究活動の態勢が整ってきました。
 基本的な活動としてこれまで行ってきたのは、国内外の医療倫理・生命倫理関連の文献や資料、あるいはオンライン情報の収集と分類を行いながら、いくつかの主要なテーマに即して問題点を整理し、様々な場でそれを発信するといったことです。具体的には、医学部学生への講義、公開講座の開催、学会や研究会での報告と討議、それぞれのテーマでの関係者への講演、また新聞や雑誌、専門誌への執筆などを通じて、研究成果を世に問うてきました。またこれらの活動は、とくに大阪大学大学院文学研究科臨床哲学研究室と密接に連携しながら進めています。公開講座を始め、このオンライン雑誌の刊行も、毎週開かれる臨床哲学セミナーに参加するメンバーらによる協力によるところが大きいと言えましょう。
 さて、本オンライン雑誌はまず、医療や生命科学をめぐる様々な問題の中からいくつかトピックを選び、それについての国内外での議論の状況や研究動向を紹介し論評するという論稿を中心に構成されます。それに加えて、生命と死、ケア、コミュニケーション、権利・義務・責任、生命の価値・人間の尊厳、医療の社会的文脈といったテーマを、哲学的・倫理学的な思考によって掘り下げていく試みも、主要な部分を形づくることになります。
 今回お届けする創刊第1号は、いまだその方向性を試行錯誤している当研究室のありのままの姿を映し出すものであり、明確な方針や確固としたスタンスに基づくものとは言えないかもしれませんが、今後の可能性をあたたかく見守っていただければ幸いです。

2001年9月20日
大阪大学大学院医学系研究科・医の倫理学教室


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