2)リン恒常性維持機構の解析
石灰化骨基質の重要な構成成分であるリンは血中においては無機リン酸の形で存在し、その恒常性を保つための調節機構が存在します。リンの負荷に対応して血中の無機リン酸の恒常性を維持するための鍵を握るのは腎臓からの排泄であり、腎不全においては高リン血症をきたすことになります。リンの必要量が多い胎児期から小児期のリン代謝の異常は成長障害を来すことから、小児領域においてもリン代謝は重要です。副甲状腺ホルモン(PTH)や活性型ビタミンDは腎臓におけるリン酸排泄量を制御する作用を有しますが、これらの因子は血清カルシウム値のコントロールを主目的としており、また逆に、血清カルシウム値が副甲状腺に存在するカルシウム感知受容体を介してPTHの分泌量を調節することから、血清無機リン酸の調節はPTHやビタミンDの主たる作用ではありません。
近年、リン利尿を制御する因子の同定が精力的に行われ、FGF-23、matrix extracellular phosphoglycoprotein
(MEPE)、Frizzled-related protein-4(FRP-4)などがリン利尿因子の候補として報告されていますが、これらの作用機序は不明であり、リン利尿因子としての妥当性についてはさらなる検討が必要です。本研究においては、無機リン酸の恒常性維持機構の詳細を明らかにすることを目的としています。
活性型ビタミンDの代謝に重要なメガリン(megalin/LRP2)の発現部位を示している。
<同じくマウス胎児腎を用いたビタミンD受容体遺伝子に対する
in situ hybridization>