研究の地平

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胸腺と自己免疫疾患

自己免疫疾患のメカニズムに迫る。

胸腺腫は胸腺上皮細胞から発生する腫瘍。これと合併率が高いことで知られる重症筋無力症は、自らの神経筋関連タンパク質を攻撃する抗体が作られることにより、全身の筋力低下などを招く自己免疫疾患です。合併しやすいメカニズムは不明でしたが、安水良明大学院生、奥野龍禎准教授(神経内科学)らの研究グループがその謎に迫りました。胸腺内の腫瘍細胞で発現している遺伝子を解析し、本来は自己に反応するT細胞を取り除く胸腺の細胞に変化が生じていることを突き止めます。さらに、遺伝要因が加わって条件が揃うと、T細胞やB細胞などの免疫細胞が活性化することが明らかに。活性化を抑える因子をターゲットにした新規治療薬の開発も夢ではないでしょう。

胸腺内で「神経筋胸腺髄質上皮細胞」が発現し、自己抗体を産生する環境が作り出されることが、重症筋無力症の一因です。