研究の地平

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がんの転移

線維が転移をガード。

転移する頻度が高いことで知られるすい臓がん。すい臓の周りには線維組織がとても多く、がんが転移するには、それらの線維を壊して全身をめぐる血管やリンパ管にたどりつく必要があります。原田昭和大学院生、菊池章教授(分子病態生化学)らの研究グループは、すい臓がんに多く 発現している「Arl4c」というタンパク質に、線維を分解する酵素が集まることをつきとめました。さらに、Arl4cの働きを抑える治療薬「アンチセンス核酸」を開発。マウスを用いた実験で転移が抑制されることも明らかとなりました。この薬はピンポイントにがん細胞に集まるため、実用化されれば、副作用の少ない薬として大いに活躍するはずです。

Arl4cの働きを抑え、がん周辺の線維を断ち切る「ハサミ」を減らすアンチセンス核酸。線維が維持されると、転移しにくくなります。