研究の地平

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中枢神経の再生

脊髄を損傷しても、元の生活に。

傷ついた中枢神経を回復させる治療法は、まだ確立されていません。再生を阻む要因として、山下俊英教授(分子神経科学)らのグループは、神経細胞を取り巻くグリア細胞に着目。損傷周囲では、タンパク質の一種「RGMa」がグリア細胞に多く発現し、軸索の伸長を妨げていることがわかりました。RGMaの働きを止める抗体を投与した動物実験では、切断された軸索が再生。運動機能が改善する可能性が示されたのです。研究グループは、製薬メーカーと連携し、脊髄損傷の患者さんに対する臨床試験を2019年から開始。現在は米国やカナダでも有効性と安全性を確認する第二相臨床試験が実施されています。脊髄を損傷しても元の生活に戻れる。それは決して夢物語ではありません。

ダメージを受けた神経軸索の再生を阻むRGMa。その作用を止める抗RGMa抗体を投与すると、損傷した箇所の修復が促されます。