研究の地平

医療のフロントラインを語るキーワード

オルガノイド

感染症から血管を守るために。

新型コロナウイルスに感染すると、全身の血管で血栓ができやすくなり、多臓器不全につながることは知られていますが、そのメカニズムは明らかになっていません。武部貴則教授(器官システム創成学)らの共同研究グループは、その謎に迫るべく、ヒトiPS細胞由来の血管のオルガノイド(=ミニサイズの立体組織)を作製してマウスに導入。感染によって血管炎を発症し、血栓が形成されることを突き止めるとともに、原因となる補体(CFD)を発見しました。さらにCFDを標的とした抗体製剤の開発にも成功。サルへの投与実験によって効果を実証しました。この成果は、新型コロナウイルスをはじめとした血管に異常が生じる感染症の研究の進展に寄与するものといえます。

重症化の過程で生じる血管内皮の損傷や血栓形成を抑えれば、重症化を防げます。新薬の開発も夢ではありません。