研究の地平

医療のフロントラインを語るキーワード

インフルエンザ脳症

根治の鍵は、ウイルスタンパク質。

インフルエンザ脳症の難しさは、重症化しても患者の脳からはウイルスがほとんど検出されず、炎症も認められないところにあります。木村志保子特任助教、上田啓次教授(ウイルス学)らの研究グループは、インフルエンザウイルスが脳の血管内皮細胞へ直接感染し、そこで産生されたウイルスタンパク質の蓄積により発症することを突き止めました。脳症モデル動物でウイルス感染から脳浮腫に至るプロセスを探ったところ、脳内では生きたウイルスはほとんど増えず、ウイルスタンパク質が大量に増殖していたのです。その産生を抑制すると症状が緩和しました。現時点では根治療法の存在しないインフルエンザ脳症について、予防・治療の可能性が広がる発見といえるでしょう。

ウイルスが血管内皮細胞に感染して、ウイルスタンパク質を産生。細胞と血液脳関門の破綻が起こり、脳浮腫を引き起こします。