横巻き: 新 適 塾
第1回 「難病への挑戦」
 

 

 

 

 

 


日 時:平成22年2月22日(月)18:00〜20:00

場 所:千里ライフサイエンスセンタービル8階801〜802号室

 

オルガネラ病:ペルオキシソームの形成機構とその障害・病因遺伝子群

 

コーディネーター 山下 俊英 教授 (大阪大学大学院医学系研究科 分子神経科学)

菊池  章 教授 (大阪大学大学院医学系研究科 分子病態生化学)

 

1.   講 演18:00〜19:00

藤木 幸夫(九州大学大学院理学研究院生物科学部門GCOE拠点リーダー 教授

2.   懇親会19:00〜20:00  5階 PORT 5

 

講師略歴

1976年  九州大学大学院農学研究科博士課程 修了(農学博士)

1976年  米国 コーネル大学  博士研究員

1979年  米国 ロックフェラー大学 上級博士研究員

1980年  米国 ロックフェラー大学 助教授

1985年  明治乳業ヘルスサイエンス研究所 主任研究員のち研究室長

1994年  九州大学理学部生物学教室 教授

1999年  九州大学大学院理学研究院 教授 

2009年  九州大学 主幹教授 

2002-2007年 21世紀COEプログラム拠点リーダー

2007年〜   グローバルCOEプログラム拠点リーダー

 

次回:第2回の予定

      日 時:平成22年5月25日(火)

      演 者:東京大学大学院医学系研究科・医学部 病因・病理学専攻 微生物学講座

教授 畠山 昌則

     演 題:「ピロリ菌と胃癌」

        詳細はホームページhttp://www.senri-life.or.jp/

        (財)千里ライフサイエンス振興財団 新適塾に掲載いたします。

オルガネラ病:ペルオキシソームの形成機構とその障害・病因遺伝子群

藤木 幸夫 

九州大学大学院理学研究院生物科学部門GCOE拠点リーダー 教授 

 生命体の基本単位である細胞が自らの遺伝情報に従って,その構造を創り上げ,複製し,またそれを制御していく機構を明らかにすることは分子細胞生物学において解明すべき重要な課題である。真核細胞においては,細胞内小器官(オルガネラ)が細胞機能の発現の中心的役割を担っており,なかでもペルオキシソームは極長鎖脂肪酸のβ-酸化,プラスマローゲンとよばれるエーテルリン脂質や胆汁酸の生合成など,多岐にわたる必須な機能を有することが知られている。また,細胞内蛋白質選別輸送,オルガネラの形成と障害機構など,いわゆるプロテインキネシスの課題解明に適したモデルオルガネラとして,近年その研究が著しく進展している。私達の研究室では,ペルオキシソームの形成機構解明と,その形成過程に障害を有するヒトの重篤な遺伝性神経疾患,ペルオキシソーム欠損症(図1)の病因解明を主題とした細胞内トラフィック/オルガネラの形成と制御のダイナミズムの問題に取り組んでいる。ペルオキシソーム形成障害病因遺伝子の解明を目指したペルオキシン遺伝子(PEX)のクローニング(表1)から、現在各ペルオキシンの機能解明を最重要課題として酵母系、哺乳動物系を中心に大きく展開している(図2)。本講演では、研究の現状と展望を議論したい。

 表1 ペルオキシソーム生合成異常相補性群と相補遺伝子

相補遺伝子

ヒト相補性群

臨床型

CHO変異細胞

PEX遺伝子産物(ペルオキシン)の特徴

日本

欧米

分子量(K)

 

PEX1

E

1

ZS, NALD, IRD

Z24, ZP107

143

AAAファミリー

PEX2 (PAF1)

F

10

ZS, IRD

Z65

35

PMP, RINGフィンガー

PEX3

G

12

ZS

ZPG208

42

PMP, ペルオキシソーム膜形成因子

PEX5

 

2

ZS, NALD

ZP105, ZP139

68

PTS1受容体, TPRファミリー

PEX6

C

4 (6)

ZS, NALD

ZP92

104

AAAファミリー

PEX7

R

11

RCDP

ZPG207

36

PTS2受容体, WDモチーフ

PEX10

B

7 (5)

ZS, NALD

 

37

PMP, RINGフィンガー

PEX12

 

3

ZS, NALD, IRD

ZP109

40

PMP, RINGフィンガー

PEX13

H

13

ZS, NALD

ZP128

44

PMP, PTS1受容体ドッキング因子,SH3ドメイン

PEX14

K

 

ZS

ZP110

41

PMP, PTS1およびPTS2受容体ドッキング因子

PEX16

D

9

ZS

 

39

PMP, ペルオキシソーム膜形成因子

PEX19

J

14

ZS

ZP119

33

ペルオキシソーム膜形成因子 ファルネシル化

PEX26

A

8

ZS, NALD, IRD

ZP124, ZP167

34

PMP, Pex1p-Pex6pリクルート因子

 

 

 

 

ZP114

 

 

ZS, Zellweger 症候群; NALD, 新生児型副腎白質ジストロフィー; IRD, 乳児型 Refsum ;

RCDP, 斑状軟骨形成不全症 II 型.PMP, ペルオキシソーム膜タンパク質; TPR, tetratricopeptide repeat.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


図1. Zellweger症候群患者とペルオキシソーム形成障害  図2.ペルオキシソーム形成因子ペルオキシンとその機能

E-mail: yfujiki@kyudai.jp

URL: http://www.biology.kyushu-u.ac.jp/~taisha/