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研究成果

平成24〜25年度: 公募研究20

上皮管腔組織形成におけるMob1の役割とその破綻
研究代表者: 鈴木 聡
研究成果

Hippo経路は細胞周囲環境からの細胞外力などを感知して活性化され、たとえば高密度細胞環境下では細胞増殖を抑制する。Hippo経路のコアコンポーネントは、上流のMSTキナーゼ、下流のLATSキナーゼの他に、これらのアダプター蛋白質であるSAV1 (別名 WW45) とMOBからなる。ヒトには7種類のMOB蛋白質があるが、LATSキナーゼと結合し強力に活性化させることが可能なMOBはMOB1AとMOB 1Bの2つだけである。しかしながらこれまでにMOB1A/1B蛋白質の個体における機能は不明であった。

そこで我々はMOB1A/1B二重ホモ欠損マウスを作製したところ、これらのマウスは着床直後に全例致死となることを見出し、MOB1A/1Bが発生に必須の分子であると報告した。次にMOB1部分欠損マウスを作製したところ、種々の腫瘍を形成したが、全例にみられた腫瘍は、管腔形成上皮組織の1つである皮膚毛嚢由来の外毛根鞘がんであった。MOB1A/1B欠損ケラチノサイトは細胞増殖が亢進しており、細胞死抵抗性で、コンタクトインヒビション障害、自己複製能亢進、最終分化障害、中心体数の増加などをみた。また半数のヒト外毛根鞘がん症例においてもMOB1A/1Bの発現減弱をみた(JCI, 2012.12)。我々は次に、胆管、肺胞細気管支、子宮、唾液腺、乳腺などの他の上皮管腔形成組織におけるHippo経路の役割も解析し、既に多くの興味ある知見を見出している。