教室で実施中の臨床研究

    

課 題名: FFPE検体を用いた遺伝子パネル検査における、ホルマリン

            固定条件の最適化


研究代表者: 森井 英一 (病理診断科・教授)
 

 
 近年、悪性腫瘍の病理組織・細胞検体を用いた体細胞遺伝子検査は急増しており、次世代シークエンサー等の新規技術を用いたゲノム診断(遺 伝子パネル検査)の臨床導入が進みつつあります。日常の病理診断はホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed, paraffin-embedded; FFPE)検体を用いて行われ、ゲノム診断についてもFFPE検体の利用が最も見込まれています。一方、FFPE検体はその取り扱い方法により品質差が生 じやすく、特にホルマリン固定により、核酸に化学的および物理的修飾を引き起こし、検体品質に大きな影響を与えることが広く知られています。そのため、ホ ルマリン固定条件の最適化は、FFPE検体を用いたゲノム診断の施行に不可欠であると考えられます。これまでにもFFPE検体についてホルマリン固定条件 とゲノム品質との関連を検討した報告はありましたが、実際にゲノム診断に用いられる遺伝子パネル検査を施行し、解析成否とホルマリン固定条件との関係を詳 細かつ前向きに検討した報告には乏しいのが現状です。本研究は、FFPE検体作製時においてホルマリン固定時間、ホルマリンの種類、固定組織体積等につい て複数の条件を設定し、その遺伝子パネル検査の解析成否との関係を前向きに検討することを目的としています。
 
 
1.研究の対象
「消化器外科領域の疾患を有する患者から採取された、下記の検体を対象とします。
・腫瘍組織検体
  採取された組織検体について、病理診断に用いたものの残余分を用います。すなわち、大阪大学・消化器外科より包括同意書を用いて同意の得られた症例につい て、手術後、病理診断科において病変の肉眼的観察、切り出しの終了した検体について、本来であれば廃棄されるはずの残余分のみを用います。
 
2.研究目的・方法
 消化器外科領域の疾患を有する患者由来の腫瘍組織検体を用いて、そのFFPE検体作製時におけるホルマリン固定条件と遺伝子パネル検査の解析成否との関 係を検討します。ホルマリン固定を行う腫瘍組織の大きさ、ホルマリンの組織(種類、濃度等)、および固定時間を含む様々な条件を種々に設定し、複数の遺伝 子検査パネルに提供することで、遺伝子パネル検査においてもっとも良好な成績の得られるホルマリン固定条件を検討します。また、FFPE検体でより有用か つ成功率の高い遺伝子パネル検査法を検討することも本研究の目的の一つになります。
  具体的な方法としては、大阪大学医学部付属病院消化器外科で患者から採取された腫瘍組織検体について、診断に用いたものの残余分を用い、種々の組織体積、 ホルマリン組成、およびホルマリン固定時間で固定を行い、引き続いてFFPE検体を作製します。作製したFFPE検体について、異なる遺伝子網羅性を有す る複数の遺伝子パネル検査を施行し、その解析が成功するか否か、成功した場合にはどの程度の信頼性を持って結果が得られたかについて検討します。最終的 に、各遺伝子パネルについて、その施行に耐えうるホルマリン固定条件の最適化を行うことを目指します。
 
3.研究に用いる試料・情報の種類
1.に記載された腫瘍組織検体を試料として用います。

4.外部への試料・情報の提供
 遺伝子パネル検査については、タカラバイオ株式会社に受託の上行います。このため、タカラバイオ株式会社に資料を提供します。資料の供与については、下記の方法で匿名化し、特定の個人を識別できないようにします。
方法:研究対象者のデータや検体から氏名等の特定の個人を識別することができることとなる記述等を削り、代わりに新しく符号又は番号をつけて匿名化を行います。研究対象者とこの符号(番号)を結びつける対応表は作成しません。
 
5.研究組織
大阪大学 大学院医学系研究科 / 大阪大学 医学部附属病院 病理診断科(研究責任者:森井 英一)
  
6.お問い合わせ先
 本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。
ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。
また、試料・情報が当該研究に用いられることについて患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、下記の 連絡先までお申出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。
 
照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先:
  研究責任者 森井 英一
大阪大学 大学院医学系研究科 病態病理学
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2
電話:06-6879-3711, FAX:06-6879-3719
メールアドレス morii●molpath.med.osaka-u.ac.jp (●を@に変えてください。)