特にHBVの感染受容体の分離・同定とそれによる培養細胞レベル、個体レベルでの感染系の樹立を目指します。HBV感染受容体については、2012年にNTCP(sodium taurocholate cotransporting polypeptide)が候補因子として、報告されましたが、十分な感染性は得られていません。協調して作用する因子が存在するものと想定し、その分子の分離・同定に挑んでいます。
NTCPがHBV感染受容体として報告されたことから、NTCPの大量発現・精製によるHBVとの相互作用の解明、特異抗体の作製、さらに立体構造の解明から抗HBV剤の開発・開拓を目指しています。
HBVは発見から半世紀以上も経っていますが、この小さなウイルス(全長3.2kbのゲノム)は謎だらけです。感染受容体もその一つですが、逆転写過程を含めたHBV複製の根幹を担うHBVポリメラーゼ(HBVpol)の諸性質には不明な点が多く残されています。その最大の理由は、大腸菌等を利用したHBVpolの大量発現・精製が全くうまくいかず、活性測定系が樹立されていないことによると考えています。全長にこだわらず、まずは逆転写活性ドメイン(reverse transcriptase; RT)の大腸菌における大量発現と精製、活性測定系の樹立から、新規抗HBV剤の開拓を目指します。