ライフスタイルの改善p53が活性化して炎症が起こると、肝前駆細胞が出現し、それががん化します。発症を抑制するにはペレチノインが有効です。Keyword生活習慣の改善で寿命延伸活性化p53(がん抑制遺伝子)炎症発癌Keywordがん抑制遺伝子食事、運動、飲酒、喫煙などの生活習慣が死亡リスクと関係しているのはよく知られています。しかし、これらの習慣を改善すると、実際にどの程度寿命が延びるのははっきり分かっていませんでした。今回それを解き明かしたのが、坂庭嶺人特任助教(環境医学)らの研究グループです。全国の40~79歳、約46,000人の20年に及ぶ健診データと死亡診断データを基に、生活習慣の改善による寿命延伸効果を分析。若いうちから取り組む方が効果的ではあるものの、80歳以降からでも寿命が延びることが確認されました。さらに、生活習慣病を多く合併しているほどメリットが大きいことも明らかに。治療の継続と同様にライフス タイルの改善も大切であることが示されたのです。本研究で用いられた改善可能な生活習慣は、ここに挙げた項目のほか、「適正体重の維持」「適量飲酒」があります。正常細胞をがん細胞に導くストレスがあると、がん抑制遺伝子「p53」が働き、がん化を食い止めます。この機能が損なわれるとあらゆるがんの発生につながると考えられ、p53を増強するがん治療薬の開発も進められてきました。一方、肝細胞がんに至る可能性がある慢性肝疾患ではp53が活性化していることが知られていましたが、どんな影響があるのかは不明でした。そんな中、新事実を発見したのが疋田隼人講師、竹原徹郎教授(消化器内科学)らの研究グループ。がん化が見込まれるマウスの肝細胞でp53を活性化させると、発がんが著しく促進されることを見出したのです。慢性肝疾患の肝臓でp53が強く働くと、高い確率で肝細胞がんが発生することも判明。今後はp53をターゲットにしたがん予防への応用も夢ではありません。DOEFF Vol. 1019何歳からでも、遅くない。肝細胞がんの意外な発症の仕組み。
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