ビッグデータを活用して、治療法の評価を効率的に。服部 聡個々人のバイタルサインを常時取得する仕組みが確立され、統計の手法で分析することで、オーダーメイドの薬が作れるように。同じ薬剤を投与されても、効く人と効かない人がいます。そういう個体差がある中で、何をもって効果があると科学的に判断できるのか。そこで私の専門である統計学が使われており、新薬の許認可などで重要な役割を果たしています。データサイエンスやビッグデータに対する社会的関心が高まっていて、中学・高校のカリキュラムに統計の科目が採用されるようになりました。大学でも関連する学部や教室が少しずつ増えています。新薬の許認可は臨床試験の結果をもとに行われますが、副作用のリスクがあり得るため、できるだけ効率的に科学的推論が行われる必要があります。そのため、「疾患レジストリ」などの既存データを有効に活用する流れがあります。患者さんの背景情報の有効活用、複数の研究結果を統合する統計手法であるメタアナリシス、ベイズ統計学などの技術による既存情報の取り込みなど、さまざま2017年より大阪大学大学院医学系研究科 医学統計学 教授。大学の理学部で応用数学を専攻し、統計学と出会う。製薬会社在職時は創薬関連の業務に従事。バイオマーカーを評価するために「メタアナリシス」と呼ばれる手法を用いた独自のアプローチを展開するなど、統計手法の開発や医学研究への応用を進めている。な方法が試みられており、多くの研究者が手探りで精度の向上に取り組んでいます。私の関心事は統計の新しい手法を開発することで、この効率化に貢献することにあります。数学とコンピューターシミュレーションが主な道具となります。分子標的薬の登場により、がんの部位に囚われず薬効のメカニズムから創薬を考える時代が到来しました。それに応じて統計解析法も「個」を意識したものに進化しなければなりません。実際の臨床研究にも新しい方法が使われ始めており、今後も新しい高度な方法を用いた臨床研究が増えてくると思います。2050年には、究極的にはその人に合う薬の特定といった個別化医療に結実するかもしれません。統計は本来「全体」をつかむものですが、「個」につながる可能性もあるのです。統計学の力で医学に貢献できることを信じ、日々の研究を積み重ねています。大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座 医学統計学 教授05Satoshi Hattori2050年にはこうなってる?統計学の力で、統計学の力で、医療の進歩に貢献。医療の進歩に貢献。
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