DOEFF vol10
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江口 英利大阪大学大学院医学系研究科外科学講座 消化器外科学Ⅰ 教授がんになることは、本当は「正しい老化現象」かもしれません。若いうちは、がん細胞ができても免疫力で撃退していますが、年を取るとそうもいかなくなり発症します。「交通事故のように突然命が断たれてしまうよりはましだ」という声があるのも事実ですが、働き盛り、子育て真っ最中にがんで亡くなってしまう方が一定数いらっしゃるのはとりわけ悲しいこと。「そういう不幸をなくしたい」という思いが、私の外科医としての原点です。専門とする部位は、主に肝臓と膵臓。なかでも膵臓がんは予後が悪く、すべてのがんの中で最も生存率が低いことが知られています。日本人のがん死亡数を見ると、肺、大腸、胃に次いで膵臓は4番目の多さ。体内の深いところにあり、画像検査では捉えにくいため、早期発見がきわめて難しい。胃や大腸なら、管状の臓器の内側を内視鏡で目視できますが、膵臓や肝臓は「固形臓器」「実質臓器」と呼ばれ、身が詰まっていますから、中を覗くのは困難です。そんな臓器にできるがんは、最新の機器でも5ミリぐらいになっていないと見つかりません。膵臓がんで5ミリは、残念ながら手遅れの場合すらあります。膵臓がんの根治には、現時点では手術による切除しかありません。放射線や抗がん剤による治療は培養した臓器ががん治療の強力な武器に。生体、または脳死者からの移植に頼らなくても済む時代がやってくる。062050年にはこうなってる?新しい発想で、新しい発想で、膵臓がんに立ち向かう。膵臓がんに立ち向かう。

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