まず、皆さんに知っていただきたいのは、認知症は「病気」ではなく「症状」だということ。頭痛と同じです。頭痛は症状であって、その原因として、くも膜下出血や脳腫瘍が考えられます。認知症も、その背後に原因となる病気がいくつも潜んでいるのです。認知症の原因の第1位はアルツハイマー病で、全体の7~8割とされていますが、私の見立てではせいぜい5~6割。割合が大きいのは間違いないので、アルツハイマー病と診断すればけっこう当たってしまうわけです。この認知症に「これが効く」というエビデンスは少ないが、研究が進めば、一人ひとりに応じた治療も夢ではない。ような「アルツハイマー病バイアス」によって、正しく診断されないと、その後の治療にマイナスの影響があるのはいうまでもありません。なぜこういうことが起きているのか、もう少し考察してみましょう。私が興味を持っている疾患のひとつが、特発性正常圧水頭症です。髄液が異常に増えて脳の外側にたまってしまう水頭症は、子どもの病気として知られていますが、特発性正常圧水頭症はお年寄りが発症します。やっかいなのはアルツハイマー病と混同されやす10がんと同じように「不治の病」ではなくなる。第2回:認知症
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