肝臓の炎症インフルエンザ脳症肝臓には、腸管で吸収された栄養素以外にも、腸内細菌やその関連物質が門脈という血管を通じて流入しています。このことにより肝臓が炎症しないよう、通常は免疫が制御されていますが、そのメカニズムはよく分かっていませんでした。宮本佑特任助教、石井優教授(免疫細胞生物学)らの研究グループは、肝臓の入り口付近に分布する一部の常在性マクロファージが、腸管経由で入り込む物質から肝臓をガードしていることを発見。そのような“衛兵マクロファージ”は、一部の腸内細菌が産生するイソアロリトコール酸によって誘導されていました。将来的には、衛兵マクロファージを人為的に増やして、慢性肝炎等の予防や治療につなげることも期待されています。ウイルスが血管内皮細胞に感染して、ウイルスタンパク質を産生。細胞と血液脳関門の破綻が起こり、脳浮腫を引き起こします。インフルエンザ脳症の難しさは、重症化しても患者の脳からはウイルスがほとんど検出されず、炎症も認められないところにあります。木村志保子特任助教、上田啓次教授(ウイルス学)らの研究グループは、インフルエンザウイルスが脳の血管内皮細胞へ直接感染し、そこで産生されたウイルスタンパク質の蓄積により発症することを突き止めました。脳症モデル動物でウイルス感染から脳浮腫に至るプロセスを探ったところ、脳内では生きたウイルスはほとんど増えず、ウイルスタンパク質が大量に増殖していたのです。その産生を抑制すると症状が緩和しました。現時点では根治療法の存在しないインフルエンザ脳症について、予防・治療の可能性が広がる発見といえるでしょう。DOEFF Vol. 1425血管内皮細胞ウイルスタンパク質ウイルス脳の血管神経細胞アストロサイトイソアロリトコール酸腸内細菌栄養素腸管衛兵マクロファージ門脈肝臓門脈付近に分布する“衛兵マクロファージ”が、病原体を飲み込んで消化し、周囲の炎症を抑制。肝臓の恒常性を維持します。常在性マクロファージKeyword出血脳血管関門の破綻アストロサイトの突起断裂Keyword敵の侵入を防ぐ肝臓の門番。根治の鍵は、ウイルスタンパク質。
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