DOEFF vol14
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サイエンスとは、互いに問いかけ合うこと。イギリスケンブリッジ大学▲ 手前の一番右が師のジョン・ガードン博士、その左が私。研究室では毎日2回ティータイムがありました。ビスケットとミルクティーで雑談を交わしたのもいい思い出。1990年の1年間、イギリスのケンブリッジ大学動物学教室に在籍。翌年から同大学に新設されたがん・発生生物学研究所(現・ガードン研究所)に移り3年間を過ごしました。師はジョン・ガードン博士。1960年代に世界で初めてカエルの体細胞の核を卵に移植してクローンをつくった方です。ES細胞やiPS細胞につながる功績により、2012年にノーベル賞を受賞しています。当時のガードン研究室は、細胞分化の研究に力を入れていました。私が調べたのはカエルの筋肉。同じような段階にある細胞が集まっていると分化が進大阪大学大学院医学系研究科医の倫理と公共政策学 教授み、バラバラだとうまくいかない「コミュニティ効果」がテーマでした。強く印象に残っているのは「君はどんな研究をしたいのか?」と問いかけ合う文化。答えるとすぐ次の質問が飛んでくる。そういう会話やディスカッションこそがサイエンスなのだと実感したものです。「物事はシンプルに」ということも学びました。どんな複雑なテーマでも3つに整理できるはず。それがガードン先生の教えでした。アカデミアの人間は、組織のしがらみ抜きに世界中の人たちとつながれます。留学には、専門の知識や技術を身に付ける以上の価値があるのです。研究者にとって、留学はかけがえのない体験。若き日の思い出を語っていただきました。留学先:▼ 日本において医療経済学の領域を確立したおじの西村周三が訪ねてきてくれました。向こうに見えるのはキャンパス近くの「ため息の橋」。DOEFF Vol. 1427加藤 和人組織のしがらみ抜きに、世界中とつながれる。それも研究者の特権です。

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