さまざまな医療分野においてめざましい業績を積み重ねてきた大阪大学大学院医学系研究科。ここでは 5 つのキーワードから、最先端の研究にフォーカス。進化し続ける医療の最前線に迫ります。私たちの体は、骨髄の造血幹細胞から血液細胞がバランスよく産生され、恒常性が維持されています。一方で、高齢になると造血機能が低下する「加齢性造血」という現象が見られるようになりますが、これを抑制する可能性を見出したのは、井上大地教授(がん病理学)らの研究グループ。セレノプロテインが過酸化脂質の蓄積を抑制し、それにより造血幹細胞の機能を維持し、免疫力に関わるBリンパ球の成熟を促すことを突き止めたのです。セレノプロテインを合成できないマウスにビタミン E を投与すると、B 細胞の減少が抑えられることも判明。加齢性造血から引き起こされる血液腫瘍の治療や予防にとどまらず、血液の若返りといった新しい医療への応用も期待されます。22酸化ストレスB前駆細胞Bリンパ球の減少過酸化脂質の蓄積が B 前駆細胞の正常な分化を妨害。セレノプロテインは、その原因となる酸化ストレスを抑制します。K e y w o r d 加齢性造血セレノプロテインが抑制造血幹細胞の機能低下過酸化脂質の蓄積好中球に分化血液も若々しく。
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