DOEFF vol15
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リキッド・バイオプシー白血病保仙直毅教授(血液・腫瘍内科学)らの研究グループは、造血幹細胞移植後に再発した急性骨髄性白血病(AML)の患者さんへの新しい治療法を開発しました。ポイントは HLA-DRB1(白血球の血液型のようなもの)の一部だけに結合する抗体を見出したこと。その抗体に反応する AML の患者さんが、抗体に反応しないドナーから移植を受けて再発した場合、その抗体が結合する細胞だけを攻撃するように改造した免疫細胞は、白血病細胞だけを攻撃します。攻撃する免疫細胞として、ドナー由来の T 細胞から CAR-T 細胞、他人由来の臍帯血から CAR-NK 細胞を作製してマウス実験を行ったところ、確かな効果を確認。特に他人由来の CAR-NK 細胞が実用化すれば、迅速かつ安価な治療が可能となるのが特筆すべき点です。膵がんは効果の高い抗がん剤が少ないため、早期発見・治療が克服の□を握っています。しかしながら、膵がんの目印となる KRAS(ケーラス)遺伝子変異の検出は、全身に転移がある場合に限られているのが早期発見の障壁となっていました。そこで谷内田真一教授(がんゲノム情報学)らの研究グループが開発した画期的な早期診断法は、胃カメラの際の追加検査として、十二指腸乳頭部を洗浄して回収した膵液中の KRAS 遺伝子変異を検出するリキッド・バイオプシー(液性生検)を行うというもの。日本において広く普及している胃がん検診の機会を捉え、膵がんリスクの高い方を対象とするオプション検査が実現すれば、膵がん克服に向けて大きく前進することになります。DOEFF Vol. 1523K e y w o r dK e y w o r d本人の白血病細胞ドナー由来のCAR-T 細胞攻撃する攻撃しない臍帯血由来のCAR-NK 細胞ドナーの正常細胞移植後再発CAR-T 細胞、CAR-NK 細胞のそれぞれ Y 字で示されている抗体が、本人の白血病細胞における目印(三角形部分)を認識して攻撃。十二指腸乳頭部専用カテーテル膵管の出口である十二指腸乳頭部に胃カメラを留置。専用のカテーテルから生理食塩水を噴射して回収し、そこに混じる膵液中の KRAS 遺伝子変異を調べます。膵がん胃カメラが膵がん克服の一手に。悪い細胞をピンポイントで攻撃。

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