DOEFF vol15
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ティーレグ免疫は自分の体を攻撃することもある「攻撃するだけでない免疫」の可能性2025 年のノーベル⽣理学・医学賞は、大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 特任教授の坂⼝志⽂ら 3 ⼈が受賞。阪大の在籍研究者から初のノーベル賞受賞となりました。1976 京都大学 医学部医学科 卒業1977 愛知県がんセンター研究所 実験病理部門 研究生1983 ジョンズホプキンズ大学 卒後研究員1987 スタンフォード大学 客員研究員1999 京都大学 再生医科学研究所 教授2007 京都大学 再生医科学研究所 所長2011 大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 教授免疫は、私たちの体と、体外から侵入したウイルスや細菌などの異物を見分けて、異物を排除するシステムです。これにより感染症から体を守っています。しかし、異物の多くは私たちと同じ生物由来であり、構造が似ているため、「自己」と「異物」の区別は簡単ではありません。自分自身の体を攻撃してしまうことで引き起こされる病気が自己免疫疾患です。関節リウマチやI型糖尿病など、一般に知られた病気にもこれに分類されるものがあります。免疫が適切に働くためには、厳密な制御が不可欠なのです。坂口教授は、制御性 T 細胞(T自己を攻撃しない仕組みを明らかにしました。通常、免疫システムが厳しく制御されているのは、ひとえに Treg のおかげです。Treg は、免疫の司令塔であるヘルパー T 細胞の一種であり、自分自身を攻撃しようとする免疫細胞を抑える「ブレーキ役」を担っています。つまり、自己免疫疾患を起こしている部位で Treg を活性化できれば、ブレーキの効きが強まり、症状の改善が期待できるわけです。一方、がん細胞で Treg が過剰に働くと、免疫の攻撃を抑えることになり、がん治療の妨げになります。reg)を発見し、免疫システムがTreg の機能を調整し、免疫が遠慮なくがんを攻撃できれば、がんの克服も夢ではありません。坂口教授は、世界中の Treg の研究者が切磋琢磨する現状を導いた先駆者です。DOEFF Vol. 1525BIOGRAPHYMessage

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