機械は便利だが、それだけで人は満たされるのか。「心」を育む塗り薬が家庭に常備される時代がやってきてもおかしくない。皮膚科医として、難病である表皮水疱症の患者さんに長らく向き合ってきました。皮膚の一番外側の上皮が剥がれ落ちてしまうこの病気の原因は、内側の真皮と接着する「のり」の役割を果たす 7 型コラーゲンが生まれつき欠損していること。毎日剥がれては治るのを繰り返し、やけどのような水ぶくれやただれが全身に広がります。重篤な患者さんは皮膚がんのリスクを抱えます。日本国内の患者数は 400 ~ 500人で、そのうち約 100人が阪大病院で治療をしています。ほとんどの臓器組織には、それを一生涯維持するための「幹細胞」が存在しています。白血病の治療で使われることからよく知られているのは、骨髄で血液をつくる造血幹細胞でしょう。表皮水疱症の場合、表皮が毎日剥がれているわけですが、その結果、表皮の幹細胞はほとんどなくなっているはずなのに、表皮は再生を繰り返しています。それをずっと不思議に思っていました。06第 4 回 :再 生 医 療生ま れ持った「再生力」で、難病に打ち克つ。
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