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大阪大学 大学院医学系研究科 病理学講座 病態病理学 教授細胞の裏側にある情報が明らかになるに従って、顕微鏡で拡大したがん細胞を映し出したモニタ上にも即座に情報が表示されるようになる。そこには治療効果が期待される薬についても表示される。僕が日々行っている「病理診断」とは、患部から採取した組織や細胞を観察し、どういった疾患であるかを明らかにする行為です。たとえば、がんを実際に見るなら、採取した組織をスライスした「病理の標本」を顕微鏡に乗せます。顕微鏡を通じて肉眼で観察したとしても、少しずつ形が違うことが見てとれるのですが、この違う部分を網羅的に抽出して、解析していく研究を最近スタートしました。それが可能になったのは、遺伝子の塩基配列を高速で読み出せる「次世代シーケンサー」の技術が進化して、病理標本にも利用できるようになったためです。これによって、日々僕たちが目視している病理標本の裏側にあるものが見えてくる。つまり目で見てわかること以外にも、裏側に隠れている情報を探れるようになるわけです。それが進んだ将来には、顕微鏡で拡大したがん細胞を映し出したモニタ上で、細胞をマウスクリックすると、細胞が持つ情報がズラズラと表示されたりするのではないでしょうか。たとえば細胞のプロフィールが出てくるだけではなく、それに対して効く薬のリストも表示される。そのなかでも臨床研究中の薬については緑色の文字で表示される、とか。2030年にはそんな未来が現実になっていても不思議ではないと思います。解析が進むと、現時点で僕らががん細胞だと思っprospective view082030年にはこうなってる?モニタで目にしたがん細胞の詳しいプロフィールが表示される。個々のがん細胞の弱点を押さえ、治療の確実性を高める。203003森井 英一

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