DOEFF_vol1
12/24

肝臓や胆道・膵臓、そして消化管で起こる病気、なかでもこれらの臓器の炎症、機能不全、そしてがんと向き合うのが私たちの仕事です。日本人の3人に1人ががんで亡くなるうちの約半分が消化器系の臓器から発症するので、人が健康に生きていくことに深く関係する仕事ともいえます。がんの発症を抑制するには臓器の炎症の制御が必要です。また、早期のがんを発見するための診断学の確立が重要です。早期にがんを見つけることで、外科的な開腹手術ではなく、より身体への負担が少ない「低侵襲治療」が可能になります。胃がんや食道がん、大腸がんなら内視鏡を使って、粘膜を一括切除することで根治できます。肝臓がんなら、超音波を用いて電極針を挿入しラジオ波を流してがんを破壊します。ほかにも抗がん剤を用いた化学療法、がんの発端となる炎症を抑えることも私たちの仕事です。発症を予防する。そして早く見大阪大学 大学院医学系研究科 内科学講座 消化器内科学 教授がんを発症しても、早期発見できるようになっているため、安全・確実に低侵襲な治療を繰り返し行えるようになる。結果的に、がんとともに生きることが今ほど深刻ではなくなる。つけて治療する。これらを目標に研究しています。2030年になると、いろんな臓器の炎症をもっと確実に抑えられるようになり、がんの発生を大きく抑制できていると思います。発生数を今の半分にしたいですね。また、微量の血液を用いてがんを早期に発見する画期的な方法も生まれているはず。がんは同じ臓器にできても、遺伝子レベルではそれぞれ個性が異なるため、それぞれの個性にあった個別化治療も進んでいるでしょう。これら進歩によって、人は今よりもがんと気楽に付き合えるようになっているはずです。発見が容易になり、安全に低侵襲治療できれば、仕事を少し休んで治療すれば済むようになり、がんはそれほど深刻ではなくなります。たとえ再発しても治療を繰り返しながら、がんとともに天寿を全うできるでしょう。がんの発症を減らし、がんと気楽に付き合える時代を作ることが、私たちの仕事です。1984年に大阪大学医学部卒業後、1993年に医学博士を取得。1998年米国マサチューセッツ総合病院 消化器内科 研究員を経て、2007年に大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学 准教授、2011年には同学の教授に就任。主に、ウイルス肝炎、肝癌、細胞死・免疫研究を専門としている。prospective view10Tetsuo Takehara2030年にはこうなってる?がんになっても、楽しい人生を最後まで送れる。早期発見、低侵襲治療が、がんを深刻ではなくす。203004竹原 徹郎

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る