DOEFF_vol1
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好中球Plexin-B2Rac1Sema4D好中球への刺激可溶型SEMA4D血管内皮細胞切断されたSema4D好中球細胞外トラップ(NET)健常者血管炎「Nishide, M. et al. Ann Rheum Dis, doi:10.1136/annrheumdis-2016-210706 (2017).より引用・改変」14簡単にいうと、生まれるときに神経に関わっていたものが、生まれた後には免疫に関わっていることを発見したわけです。免疫の病気に関わるセマフォリンがひとつあるなら、ほかにもあるだろうと調べると、次々と見つかって全部で20あるうちの10を発見しました。なかには骨の保護作用のあるものや、アトピーとかぜんそくに関わるものも含まれます。これらの成果は国際的ジャーナル『Nature』に発表され新聞にとりあげられたり、雑誌で特集が組まれたほか、英文書籍『Semaphorins』も出版されました。蛋白質研究所の高木淳一先生との共同研究でも『Nature』にも論文が掲載されました。このあたりを境に僕の研究には弾みがつき一気に広がったのです。長らくいた微研を離れ、あらためて呼吸器・免疫アレルギー内科学の教授として医学部に戻ってきた理由は主にふたつあります。微研では研究だけで臨床からは離れていましたが、僕は親をがんで亡くして医者を目指したので、微研での研究成果を踏まえて、あらためて病気に向き合いたいと思ったからです。もうひとつは、研究所では学生との触れあいが少ないけれど、医学を志す若い子にいろんな道を提示して応援したかった。そういった思いから始まったのが「100人面談」です。これは1年間に100人の学生が僕のオフィスに来て、将来のよもやま話をする活動。ひとり1~2時間。内科志望の学生に限りません。外の病院の人にも会います。この6年間で600人以上と会いました。僕も「医局を離れる」というレールから外れる経験をしているから、型にはまらない若い人の挑戦や夢を応援したい。影響力では僕が憧れたスターには及びませんが、ときに週末やお盆を返上して若者の相手をするほど、この時間に賭けています。血管内皮細胞に発現するPlexin-B2から、好中球に発現するセマフォリン4D(SEMA4D)に入るシグナルが、好中球の活性化を制御している。血管炎の患者の好中球では、セマフォリン4Dが切断されてブレーキが外れた状態のため、不適切に活性化している。日本免疫学会を作った山村雄一氏の有名な言葉。夢見て飛び込んでも、実際には手を動かさなければいけないし、それだけでなくきちんと考えて遂行するといった意味。熊ノ郷教授の座右の銘のひとつ。僕にとって研究は麻薬です。

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