DOEFF_vol1
7/24

「ゲノム」とは日本語で「遺伝情報」のことで、生物の設計図です。ヒトゲノムの配列が解読できたのが10数年前で、かつては一人分30億の配列を読むのに一年くらいかかりました。現在では数日で行えます。その設計図からは「どんな人になる」「どんな病気にかかりやすい」がわかってきます。これは究極の個人情報ともいえるでしょう。かつては研究者が誰かのゲノムを研究しても、それを患者さんの治療に還元する動きはなかなか進んでいませんでした。しかし今後はもっと個人が活用する情報になっていくと思います。2030年にもなると、ゲノム情報の理解は今より格段に進んでいるはずです。「あなたのゲノム情報はこうなので、こんな治療をしたほうがいい」「こんな病気になりやすいから気を付けましょう」と生かしていけます。もちろん治療、予防だけでなく、さまざまな病気の原因の解明にも役立ゲノム情報や臨床情報を一括で管理している「ゲノム情報センター」がクラウド上にあって、個人認証のキーとなるカードを端末にかざすと、全国どこにいても戸籍情報を取り寄せるようにゲノム情報を手にでき、病気の治療に活かせる。てられるはず。創薬に生かすこともできます。一般的にひとつの薬を完成させるのに数千億円もかかるのは、新薬の治験の9割以上が失敗すること、使ってみると予想通りの効き目がないこと、副作用が起きることが主たる原因です。しかしゲノム情報を活用することで創薬のコストを下げられると期待されています。製薬企業も、コストの観点から開発が遅れていた病気の新規創薬に乗り出すことが可能になるでしょう。かつては「データだけでは病気はわからない、薬も作れない」という考え方もありましたが、最近は「データが有効な場面も多いのでは」という考え方が生まれつつあります。実際のところ、データでどこまで病気のことがわかるのか。これまでとは異なる方法でそれを突き詰めていくのが僕のミッションです。2005年東京大学医学部医学科卒業。2011年東京大学大学院医学系 研究科内科学専攻 博士課程修了。東京大学医学部附属病院にて初期研修修了後、東京大学大学院医学系研究科、日本学術振興会 特別研究員、同海外特別研究員、Brigham and Women's Hospital、Harvard Medical Schoolなどを経て、2016年より大阪大学大学院医学系研究科教授として勤務。専門分野は、遺伝統計学、バイオインフォマティクス。大阪大学 大学院医学系研究科ゲノム生物学講座 遺伝統計学 教授prospective viewDOEFF Vol. 0105Yukinori Okada2030年にはこうなってる?誰もが認証カード一枚で、ゲノム情報センターにアクセス。究極の個人情報「ゲノム」が医学の世界を変える。01岡田 随象2030

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る