DOEFF_vol1
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どのがんに関しても共通して重要となるのがバイオマーカーです。これは血液中に測定されるタンパク質などの物質を診るだけで早期がんを発見できたり、治療後の再発を見つけられる指標。なかでも「これは治療が必要」「治療をせず、経過観察をしていても大丈夫」を区別をするためのバイオマーカーを探しています。現時点で唯一見つかっている前立腺がんのマーカーはPSAというもので、腎臓がんや膀胱がんに関するものは見つかっていません。私たちはそれを一早く見つけて、世に発表していきたい。2030年には、このバイオマーカーの研究が日の目を見ているでしょう。また今後推進されるであろうゲノム医療も一般化しているはずです。すると今までは遺伝子を調べて「あそこにこんな異常があります」止まりだったものが「その異常には、こういった薬が効きます」までわかってきます。毎年受ける検診で血液を調べるだけで腎臓がんが見つかるとかね。食べているもの、家族歴、一般血液検査、その他検診データ。これらを毎年積み重ねていって人工知能で解析したら「こういうものを食べる人は、何年後に腎臓がんができる確率が何%」と即データがはじき出される時代になっていても不思議ではありません。前立腺がんも腎臓がんも、生活習慣が発がんに影響していると言われています。例えば高血圧、たばこ、肥満。前立腺がんの場合は、高脂肪食や肉のおこげが良くないと言われています。ところが、一見何の関係もないと思われるデータだってたくさん収集すれば、現時点では関連性が見つかっていないだけで、どこかで関係しあっていると判明するかもしれません。遺伝子検査も大事ではありますが、普通に存在するいろんな検査の組み合わせによって、何かのリスクを予測することは、今後、人工知能を手にすれば可能になるでしょう。いずれにしても現時点では「がんは治す」と言っていますが、「予防こそが最高の治療」です。お金もかかりませんし、予防できるならそれに越したことはありません。それが可能になる未来が訪れていることを期待しています。1986年に大阪大学大学院医学部卒業。1990年、大阪大学大学院医学研究科外科系単位取得満期退学。1990年から1991年まで東大阪市立中央病院医員。1991年から1993年まで大阪大学医学部泌尿器科研究生。1991年から1993年まで、アメリカNIH (LMCB/NIDDK/NIH) Visiting Fellow。1994年に大阪大学助手に、その後、講師、助教授、准教授を経て、2010年より大阪大学大学院医学系研究科教授。DOEFF Vol. 0107Norio Nonomura

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