DOEFF_vol2
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2030年にはこうなってる?DOEFF Vol. 02電子カルテの集積からなる医療データベースが生まれ、一人ひとりの患者に最適な治療の指針がどこにいても得られる。また、高度に進化したAI が医師の診断に見落としがないかをチェックするようになっている。大阪大学医学部附属病院では、2010年にカルテの完全電子化を果たしました。電子化による最大のメリットは情報共有です。すべての医療スタッフが情報を共有できることで、緊密なチーム医療がかないます。当病院内だけでなく、地域の医療施設との情報共有が始まったこともポイント。また、多数の医療機関で、対象疾患の症例データを容易に集積できる仕組みを作ることで、臨床研究が推進されます。現在は15の関連病院の電子カルテをネットワークで結び臨床データを集める仕組みが動いていますが、これが世界的に広がれば数多の症例とその治療の経過が網羅された巨大データベースが形になります。ここにはCTやMRIでの画像データに始まり、血液や組織の検査結果、さらにはゲノム情報までを紐付けたい。そうすれば過去の膨大な症例を解析して、患者さん一人ひとりに最適な治療方法が示され、世界中の医師がいつでも入手できるようになるでしょう。2030年にはこの巨大なデータベースに人工知能(AI)がアクセスし、知識の生成をサポートしていてもおかしくはありません。各学会が発表している最新のガイドラインを自己学習するAIも登場しているはず。薬を処方する際に、副作用による医療事故を防ぐほか、治療内容と最新のガイドラインとを照らし合わせ、医師の判断に不備がないかをチェックします。今後ますます複雑化していく医療の現場において、医師が的確な判断を下すには、こういった支援が不可欠です。それにネットワークにアクセスできれば、世界中どこからでも同様な支援が受けられるわけですから、過疎地域で孤軍奮闘する医師にとって、これほど頼りになる味方はいません。世界中のカルテが蓄積された巨大なデータベースを医師と人工知能とが二人三脚で使いこなす。2030年には、そんな診療風景が現実のものとなります。Yasushi Matsumura2010年より大阪大学 大学院医学系研究科 医療情報学 教授。情報通信技術を応用することで、医学・医療を発展させる医療情報学が専門。大阪大学医学部附属病院にて医療情報部 部長、病院長補佐も兼任。病院移転時より病院情報システムの構築を担当し、2010 年には完全ペーパレス、フィルムレスのシステムを実現させた。データの二次活用を可能とする体制を整備し、施設間の連携システムを推進している。世界中の電子カルテが共有され巨大な医療データベースに松村泰志大阪大学 大学院医学系研究科情報統合医学講座 医療情報学 教授052030prospective view医療データベースとAIが、医師の診断をサポートする。11

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